本研究の目的は、北海道での明治以降の大規模な土地利用改変に対する河川及び汽水湖生態系の反応を、汽水湖の堆積物コア解析や古文書、統計資料、数理モデル等を駆使して復元することにより、森と川と海の相互作用を明らかにし、水系全体の動態予測と再生指針の構築に資することである。 平成26年度は厚岸湖において堆積物コアを採取するとともに、既往文献や収蔵されている試料の調査を進めた。特に昭和初期の厚岸湖産と見られるカキ殻を発見した。一方、集水域の土地利用変化を解析し、農地が第二次大戦後に大幅に増加したことを明らかにした。 平成27年度は堆積物コアの年代測定を進めると同時に、分子微生物学的手法によって過去の植物プランクトン相の復元を試みた。堆積物から渦鞭毛虫や珪藻などの有殻性プランクトンが検出可能なことを確認し、また、現在厚岸地方で貝毒被害を生じている有毒種がかなり以前から定着していることを明らかにした。 平成28年度は堆積物コアの年代測定結果を解析し、採取されたコアにより約90年前まで復元出来ることを確認した。また、河川流況モデルのパラメータ検討の一環として、流入河川上流部の冬季の凍結状況と、蒸発散に関わる海岸線付近での海霧による微気象改変について検討した。厚岸湖流入河川の流況については下流部での結氷が知られていたが、水位計データから厚岸湖集水域の地質では源頭部でも凍結することを明らかにした。また、春から秋に厚岸地方沿岸部を覆う海霧による微気象改変について、樹木及び海由来物質の分布状況から海霧の被覆範囲を検討した。
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