研究課題/領域番号 |
26550090
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研究機関 | 埼玉県環境科学国際センター |
研究代表者 |
田中 仁志 埼玉県環境科学国際センター, 水環境担当, 主任研究員 (40415378)
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研究分担者 |
矢吹 芳教 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境情報部、環境研究部、食の安全, 環境研究部, 主任研究員 (00360818)
相子 伸之 地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所(環境情報部、環境研究部、食の安全, 環境研究部, 主任研究員 (30443526)
大塚 宜寿 埼玉県環境科学国際センター, 化学物質担当, 主任研究員 (30415393)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ネオニコチノイド系殺虫剤 / 水生昆虫 / 吸着係数 / パッシブサンプリング / 暴露時間 / 新規生物検定法 |
研究実績の概要 |
昆虫の神経伝達を阻害するネオニコチノイド系殺虫剤は害虫駆除に非常に効果がある一方、環境水へ移行後の濃度は情報不足であり、河川生態系において餌生物として重要な水生昆虫に対する影響が心配されている。本研究では、ネオニコチノイド系殺虫剤の河川汚染実態の把握および水生昆虫による生物検定法の開発を目的としている。本年度は、ネオニコチノイド系殺虫剤を対象にしたパッシブサンプリング用樹脂の吸着係数を算定し、その成果として論文投稿を行った。また、大阪府内の河川において、パッシブサンプリングによる調査を行い、有効性の評価は継続中である。 大阪府内の山間部の河川のモニタリング地点における水生昆虫相の調査を行うとともに、河川水中の汚染物質による水生昆虫相に対する定性的調査法の検討を行い、ブロックなど構造物を設置する調査方法を提案した。 ネオニコチノイド系殺虫剤に対する生態影響試験には、採集しやすい水生昆虫のカワゲラおよびヒラタカゲロウを用いて生物検定法を検討した。埼玉県内の実験材料生物(水生昆虫)の採集場所のネオニコチノイド系殺虫剤汚染実態を把握した。ジノテフランに対する致死濃度は両者で異なり、したがって殺虫剤の生態影響を評価する際には、暴露時間が重要であり、環境中の濃度の経時変化の把握が重要であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ネオニコチノイド系殺虫剤を対象にしたパッシブサンプリング用樹脂の選定およびその吸着係数が算定できた。これによりパッシブサンプリングの分析結果の解析に必要な技術的背景が確立できた。 ネオニコチノイド系殺虫剤の汚染がない河川において調査・検討した結果、水生昆虫相に対する定性的調査方法が確立できた。 ネオニコチノイド系殺虫剤の水生昆虫(カワゲラ、ヒラタカゲロウの幼虫)に対する影響濃度は、両者で異なった。毒性発現には、暴露時間が重要であり、河川水中の平均濃度の把握を得意とするパッシブサンプリングは有効であろう。ただし、研究計画時に実験材料として想定していたトビケラ類の幼虫は、採集が困難であったという当初予期していないことが起こったが、カワゲラで代替することができた。
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今後の研究の推進方策 |
水生昆虫の行動に対する影響をエンドポイントとした、ネオニコチノイド系殺虫剤の生物検定法の確立を引き続き行う。さらに、実験から得られた水生昆虫に対する影響濃度および暴露時間を参考にして、実河川において吸着樹脂の設置時間など生態影響を踏まえたパッシブサンプリング調査および評価を行う。なお、本研究計画時に実験材料生物として想定していたトビケラ類については、すでに農薬が影響している可能性も想定されるため、水生昆虫相の調査において配慮する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要な分析試薬の入手や実験装置の改良に想定以上の時間を要したこと、学会が近郊で開催されたため旅費が少額であったことなどの理由により、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
分析試薬の購入や生物実験・解析装置の改良等に必要な物品費、河川調査や学会発表の旅費などへの支出を計画している。
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