長期間無施肥でも慣行栽培並の収量を上げている稲作農家が存在する。本研究では,長期無施肥で多収を達成している理由を明らかにするために,収量性の異なる長期無肥料水田の窒素収支を比較した。多収水田では生育を通じて土壌からの無機窒素の供給が高く,イネは慣行栽培並みの窒素吸収量を得ていた。これは,多収水田では前年の稲わらが土壌中で分解され無機窒素として土壌中に循環する量が多いことと土壌微生物が稲わらを分化する能力が高いことに起因していた。しかし,分解だけでは窒素の不足を補えず,土壌中での微生物(細菌)による窒素固定も大きな貢献をしていることが想定された。
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