本研究課題では、1.金属球蓄熱体の合金設計、2.潜熱蓄熱材を用いたバイオマス改質(炭化)実験装置の作製、3.提案プロセスのシミュレーションモデル開発、4.廃熱温度およびバイオマス特性に対応したプロセス原理探索の各項目について研究を行った。研究成果概要は以下のとおりである。 ・本プロセスへの適用可能な合金素材の熱的特性の精査および変態温度と潜熱量制御法の検討: 比熱に加え、結晶構造や磁気変態に伴う潜熱を利用して蓄熱量の増加が期待できる合金系を数種選択し、加熱・冷却時の熱容量のヒステリシスを含む精度良い測定を行い、熱的特性を評価した。同時に、当該合金系の組成および調製条件と変態温度、潜熱量の温度依存性に関する詳細な検討を行った。 ・炭化実験装置による効率的なバイオマス改質(炭化)プロセス原理の検討: 本研究で作製した小型回転炭化実験装置を使用して、種々条件を変更したバイオマスの改質実験を行った。市販杉材をバイオマスの基本試料として使用した。蓄熱体粒子の予熱温度を250~800℃の広範囲に変化させ、炭化装置内の蓄熱体およびバイオマス粒子の運動と熱交換速度、バイオマス試料の乾燥と炭化挙動に関する基礎データを取得した。 ・総合シミュレーションモデルによるプロセス効率の検討: 上記炭化実験によって得られた種々のプロセスパラメータと測定結果と比較し、DEMを基本とする本バイオマス炭化プロセスのシミュレーションモデルのフレームを作成した。 ・最終(H28)年度は上記結果を考慮しつつ、主要プロセスパラメータが炭化実験結果に与える影響を定量的に考察し、合金粒子とバイオマスの直接接触による効率的な熱供給を可能とするプロセスについて検討した。さらに、炭化速度と炭化試料の粉砕性の経時変化について検討を行い、粉砕が同時進行する基本的な迅速炭化プロセス原理を提示した。
|