研究課題/領域番号 |
26550097
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
赤松 史光 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10231812)
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研究分担者 |
林 潤 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70550151)
小林 昭雄 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30115844)
木村 泰裕 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (10432361)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 極限環境植物育成 / 高圧環境 |
研究実績の概要 |
植物の生産性の向上や含有成分量の向上に寄与する一つの手法として,植物を育成する際に環境ストレスを加除する方法がある.光量や光質,二酸化炭素濃度などに起因するストレス応答を利用した手法は,既に植物工場で実用化され,植物の育成期間の短縮や含有成分の向上が報告されている.本研究では,環境因子として着目されることがなかった高圧環境が植物に与える影響を評価することを目的とした. 植物は,光合成によって大気中の二酸化炭素から炭素を固定し,固定された炭素は,一次代謝産物の生成に用いられ,生育状態や環境によっては二次代謝産物の生成にも用いられる.本研究では,植物の育成環境のうち,高圧環境,二酸化炭素分圧,育成環境温度に着目する.先行研究により,圧力,二酸化炭素分圧,温度はいずれも光合成や暗呼吸量に影響を与えることが明らかになっている.評価は開放系における計測実験によって得られる高圧環境が見かけの光合成速度を用いて行った. 結果として,高圧環境下において,周囲温度によらず植物の見かけの光合成速度が上昇する傾向を示した.また,常圧環境では,温度上昇に伴い,光合成速度が単調に増加するのに対して,0.2 MPaおよび0.3 MPaの高圧環境下においては,特定の温度(30°C付近)までは,温度上昇に伴い光合成速度が単調に増加し,温度条件が高い場合(36°C)では見かけの光合成速度が減少する傾向を示した.すなわち,高圧環境では植物の温度に対する応答性が変化することが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高圧環境を維持しつつ連続的に植物を育成することが可能な実験装置の構築,モデル植物(シロイヌナズナ)育成実験による装置の検証,データ解析手法の構築は行われており,実験環境の構築に対しては順調であると判断できる.しかしながら,育成圧力および初期温度等の植物育成に対して重要なパラメータが,植物育成に与える影響の時間応答性まで拡張して検討する必要があったため,リアルタイム光合成計測系の構築を行った.本計測系の構築,データ精度の検証に時間を要した関係から遺伝子解析にたいする検討は28年度へと持ち越しとなった.そのため,評価としては概ね順調に進んでいるとした.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度までに構築した,極限環境を実現できる植物育成装置を用いて,リアルタイム光合成活性に及ぼす圧力および育成温度の影響を明らかにする.具体的には,圧力変化に対する光合成速度の応答感度を.これまでに確立した評価手法(見かけの光合成量)を用いて評価する.また.本年度はこれまでに得られた結果に加えて,乾燥重量を評価の軸とすることにより,二次代謝成分に対する見当も開始する.さらに,植物育成環境に影響を与える光源の影響(特に波長選択性)について検討を行うために,光源をLEDに変更して植物育成実験を行う. 同時に極限環境における植物育成を行った結果を,遺伝子的に明らかにすることを目的として環境ストレス遺伝子群の網羅的解析を行う.ここでは.高圧環境や昇温環境の組み合わせによってストレス耐性の獲得に関わるタンパク質を更生する遺伝子群の誘導をマイクロアレイ法などの手法を用いて明らかにする. 平成27年度までは,遺伝子配列が判明しているシロイヌナズナを対象とした試験を行ってきた.平成28年度も引き続きシロイヌナズナを用いた試験を行うとともに,ウキクサを対象とした極限環境における植物育成実験を行うことで,ウキクサのバイオマスとしての利用可能性の検証を行う.
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