研究課題/領域番号 |
26550099
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
井口 恵一朗 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (00371865)
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研究分担者 |
阿部 信一郎 茨城大学, 教育学部, 教授 (40371869)
堀江 哲也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (40634332)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 希少種 / 奄美 / 観光資源 |
研究実績の概要 |
リュウキュウアユが生息する奄美大島では、個体数の急激な減少により、絶滅が危惧されている。本亜種を衰退に導く生態学的メカニズムの概要は明らかにされつつあるが、科学的な知見が行政施策に反映される機会は少なく、現に個体群の回復には至っていない。 初年度は河川の環境収容力を明らかにする目的で、リュウキュウアユの主生息地の一つである役勝川の一次生産力を測定した。開空度と付着藻類群落の内的自然増加率(r)および最大現存量(K)の関係を解析し、開空度の流呈分布から生息域全体の一次生産力を算出した。1日にアユが利用できる付着藻類量から役勝川で生息可能なアユ個体群の最大湿重量を推定した。その結果、役勝川の一次生産力は316 kg/日、リュウキュウアユの環境収容力は6.6 t(体重10 g/尾として約66万尾)と推定された。目視調査で確認されている役勝川のリュウキュウアユは多いときでも1~2万尾程度に留まり、他の藻食動物との共存を考えても、役勝川にはまだ多くのアユを養い得る余地が残っていると考えられた。 一方、観光資源の観点から、希少魚リュウキュウアユに潜在する経済価値を評価するために、アンケート調査の準備を進めた。初年度は、行政関係者、観光業者、地域住民等の異なるセクターを対象にして、聞き取り調査を実施した。本結果を基に、次年度はアンケート調査項目を選定する。また、リュウキュウアユ増殖技術選定シミュレーションモデルの構築を現在行っているところである。プロジェクトの進行はおおむね当初に予定している通りである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
河川調査については、奄美大島を流れる役勝川の環境収容力を明らかにすることができた。他方、アンケート調査に関しては、現地における聞き取りを通して、アンケート調査項目の選定を行っている段階にある。さらに、リュウキュウアユ増殖技術選定に関しては、シミュレーションモデルの構築を現在行っているところである。以上のことから、平成26年度の研究実施計画に掲げた主要な項目は概ね達成されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に引き続いて河川調査を実施して、分析精度を高める。また、平成26年度の聞き取りに基づいて選定した質問項目を使って、アンケート調査を実施する。さらに、シミュレーションモデルを動かして、保全効果を最大化するための予算配分について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケートに関して、調査の実施に必要な事前情報の収集に注力していたため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度未使用額を加えて、規模の大きなアンケート調査を実施する。
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