研究課題/領域番号 |
26550099
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
井口 恵一朗 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (00371865)
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研究分担者 |
阿部 信一郎 茨城大学, 教育学部, 教授 (40371869)
堀江 哲也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (40634332)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 希少種 / 奄美 / 観光資源 |
研究実績の概要 |
役勝川の一次生産力に及ぼす栄養塩濃度の影響を確認するため、27年度は、上流域と中流域にそれぞれ1ヵ所ずつ調査地点を設け、河川水の栄養塩濃度を比較した。中流域の栄養塩濃度(NO3-N 0.024mg/L、PO4-P濃度 0.074 mg/L)は上流域(NO3-N 0.036mg/L、PO4-P濃度 0.160 mg/L)に比べて高い値を示した。また、藻類培養試験の結果、培養5日後の藻類量は、中流域の河川水に比べ、上流域の河川水を用いて培養した場合に大きな値を示した。これらのことから、本川の一次生産力は栄養塩濃度により制限されており、栄養塩類の供給は主に上流域の森から流出する渓流や沢などに強く依存していると考えられた。 観光資源の観点から、希少魚リュウキュウアユに潜在する経済価値を評価するために、現地でアンケート調査を実施した。27年度は、奄美大島における自然環境と観光需要の関係を明らかにするために、8月の奄美空港を利用する観光客を対象に、「観光と自然に関する研究」と題して、全部で28問からなるアンケート調査を実施した。その結果、221通のアンケートを集めることができた。山、川、海の絶滅危惧種を含む野生動物、魚、サンゴと出会うことに対し事前に形成していた期待と、それらの生息域に人々が観光として足を運ぶことに実際にどの程度の時間(観光の全体の時間の何割)をかけたについて捉えた。その中でも、山間部およびリュウキュアユ生息河川における滞在時間に基づいて、海辺環境との対比における河川環境の集客効果について考察をおこなった。また、世界遺産(自然遺産)に暫定リスト入りが、自然を目当てとする観光客の集客効果についても検討を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
河川調査について、リュウキュウアユの主生息河川の一つである役勝川の生産力を明らかにすることができた。他方、アンケートに関しては、質問項目の絞り込みに次いで、実地調査を行うことができた。ただし、結果の一部については、解析の途中にある。以上のことから、平成27年度の研究実施計画に掲げた主要な項目は、概ね達成されたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は、リュウキュウアユ生息河川の河川生産力ならびに観光需要に係るアンケート調査結果に係る解析結果を総合し、最大の費用対効果をもたらす最適保全施策運用モデルを提示し、生物多様性の保全と島嶼振興の両立を図る社会実装を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
アンケート調査結果の解析が年度を跨いで継続中のため。また、学会参加の適当な機会を逸してしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度未使用額を加えて、アンケート調査結果を完遂させると同時に、成果発表の機会を求めて積極的な学会参加を行う。
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