研究課題/領域番号 |
26550100
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
原薗 芳信 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 客員研究員 (90137240)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 微量栄養塩 / 森林火災 / 北方林 / 凍土層の融解 / オゾン / 火災煙 |
研究実績の概要 |
植物の生長は窒素や微量栄養塩の可給性に大きく影響される。凍土上に分布する北方林植生では栄養塩循環が遅いため微量栄養塩供給が生育の制限因子となっている。一方,北方林では夏季の森林火災で放出される栄養塩を含む火災煙が森林に沈着することで生態系への窒素や微量栄養塩の供給として重要と考えられるが,定量的には未解明である。本研究は温暖化に伴う北方林の生育や炭素収支へ影響解明の基礎研究として,北方林植生における窒素および微量栄養塩の沈着と森林火災煙の移流との関係,ならびに凍土層融解に伴う窒素酸化物放出とオゾン放出の関係を解明する。 アラスカ大学構内の永久凍土に生育しているクロトウヒ林に設置されたフラックス観測タワー(UAFサイト)を利用して,多段エアロゾル粒子捕集フィルターにより,窒素および微量栄養塩(ここでは,無機硫黄成分,アルカリ金属およびアルカリ土類金属)の沈着量を測定した他,オゾン分析計と窒素酸化物分析計を新規に設置し,ガス態の濃度を連続観測した。 連続観測から森林火災煙の移流の有無を特定し,移流がある場合を過渡的な負荷状態として集中観測する計画であったが,2014年夏季は降雨の多い湿潤な気候であったため,UAFサイトへの火災煙の到達がなかった。このため清浄空気状態と負荷状態の比較測定はできなかったので,次年度も観測を試みる。 森林火災煙の移流が北方林の栄養塩の沈着に及ぼす影響を,過去のデータから解析し,アラスカ内陸部の火災が栄養塩循環に影響していることを確かめた。現在論文投稿中である。オゾンの重要な前駆物質である窒素酸化物をリースした分析計で測定した。しかし,火災煙移流が無かったため,詳細は把握できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請予算に比べて研究費配分が少なかったので,予定を変更してレンタルで窒素酸化物を測定する分析計を導入した。しかしながら,2014年度はアラスカが異常気象年で降水量が多く湿潤だったため,火災煙が観測サイトまで到達せず,初期目標としていたデータを取得できず,リースにより観測を行った。リース期間終了後の2014年10月に測器を返却したので,2015年度は測定の予定がない。 挑戦的研究であるが故に,異常気象のためとはいえ,期待したデータを確保できなかったことは残念である。しかし,Alaska において, CASTANETなど,火災煙の捕集やその分布に関するデータを集めることができたので,これらを用いて,2015年度のとりまとめに活用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,2014,15年度の2カ年間の実施計画であるが,2015年度の予算が限られるので,現地観測は非常に困難である。一方,2014年度はアラスカが異常気象年で降水量が多く湿潤だったため,火災煙が観測サイトまで到達せず,初期目標としていたデータを取得できなかった。 このため,得られているデータを元に,凍土層融解開始時のオゾン生成と前駆物質との関係についてまとめ,年度末に行われる国内学会(生態学会や日本農業気象学会)で成果を発表する。さらにフィルター捕集の分析を連携研究者の協力の元に進め,その結果を利用して,可能な範囲で森林火災煙の移流と窒素成分・微量栄養塩の沈着の関係をまとめ,年度末までに「森林火災煙移流が北方林の栄養塩沈着に及ぼす影響」として論文化し,学術誌に投稿,公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は2014年度ot2015年度の2年間の実施計画である。しかしながら,2015 年度予算は2014年度に比べて,非常に少額であり,海外での研究を継続することが困難と思われた。底で,購入予定の窒素酸化物分析計をレンタルの分析計で3か月間のみ測定し,節約した資金を2015 年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年度もできるだけ,現地アラスカ大学に出張し,データ収集,試料収集に努める。
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