研究課題
永久凍土地帯の高緯度生態系では土壌圏からの栄養塩加給性に制約があるため,栄養塩の動態が生育を律速するとされている。一方,北方林では森林火災の発生件数と規模が地球温暖化に伴なって増加しており,これら森林火災由来のエアロゾルや微量栄養塩の生態系への沈着は,北方林での栄養塩循環に影響していると考えられた。そこで,火災煙の生態系への沈着が北方林の炭素収支や生育に影響しそれが温暖化の進展に伴って変化しているとの仮説をたてて,観測的データと既往モデルの改良により,これらを明らかにしようとした。森林火災に伴う微量栄養塩の沈着と火災煙の移流との関係を明らかにするために,Alaska大学キャンパス内クロトウヒ林のフラックス観測タワーに設置した多段式フィルター装置で火災煙に含まれるエアロゾルなどをサンプリングした。2014年度に集中してフィルタの収集を行ったが,火災煙が観測サイトに直接の到達することは少なかった。2015年度は常駐観測が困難となったので,フィルタ装置によるサンプリングはせず,これまでに収集したフィルタの分析と火災煙の通過コースなどの解析を行った。フィルタから求めた微量栄養塩の沈着速度は火災煙の移流が観測サイトに達する流跡線の場合に大きくなることがわかった。フィルタ分析から得られる絶対的な濃度が小さいため,2週間に一度の沈着速度しか出せないことがわかり,火災煙の到達毎に微量塩の沈着量を定量的に評価することは困難であることがわかった。定性的には妥当な結果が得られたが,当初挑戦課題とした火災煙に含まれる微量栄養塩の加給量を求めるまでにはいたらなかった。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
Agricultural and Forest Meteorology
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