研究課題
稲わらや古紙、廃建材等のリグノセルロース系バイオマスからの効率的なメタン発酵技術の確立は、廃棄物の減量及び環境保全、持続的な炭素循環型社会の構築に寄与するものである。高温メタン発酵におけるセルロース分解は、主に、糖質加水分解酵素複合体(セルロソーム)を生産する好熱嫌気性細菌によって行われていると考えられる。リグノセルロースの効率的な分解には、多種多様な植物バイオマス分解酵素が必要であるが、セルロソーム中に存在しない酵素種も数多く存在するため、本研究では、セルロソーム生産菌である好熱性嫌気性細菌(Clostridium属細菌)を対象に、植物バイオマス分解酵素発現株の作出を行った。平成28年度は、セルロソーム骨格タンパク質分泌シグナルを付加した好熱菌由来セロビオース分解酵素の発現プラスミドの構築を行った。また、この分泌型セロビオース分解酵素遺伝子に、セルロソーム骨格に対する結合ドメインを融合したセルロソーム結合型セロビオース分解酵素の分泌発現プラスミドも構築した。これらの発現プラスミドを、エレクトロポレーション法によって好熱性嫌気性細菌(Clostridium属細菌)へ導入し、薬剤耐性が付与された形質転換体を得た。得られた形質転換体の培養上清を対象に、セロビオース分解活性の検出を行った結果、分泌シグナルを付加していない酵素遺伝子を導入した形質転換体と比較して、分泌シグナルを付加した酵素遺伝子を導入した場合、培養上清中のセロビオース分解活性が上昇していた。これまでの本研究成果から、好熱性嫌気性細菌からの組換え酵素の発現量は、形質転換体によって大きく異なることが分かっているため、今後、更なる高分泌発現株のスクリーニングが必要と考えられる。
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Scientific Reports
巻: 6 ページ: 35709
doi:10.1038/srep35709
http://ch.ce.nihon-u.ac.jp/~hirano/index.html