H27年度は、微生物学的知見に基づくMBRの高活性維持管理技術の確立に向けて、小型MBR装置とオリーブ油を使用したモデル油含有廃水を用い、試験運転を行った。運転条件において油濃度を段階的に上げることで処理機能低下とファウリングを誘引させ、温度、pH、DO、MLSS、TOC、COD-Cr、TN、アンモニア濃度、膜間差圧を分析した。また、小型MBRの機能低下過程、膜間差圧上昇時の汚泥中の微生物群を16S rRNA遺伝子をターゲットとした次世代シークエンサー解析によって明らかにした。油添加濃度が600 ppmを超えると処理能力が低下し、油添加後に微生物群衆構造が劇的に変化することが明らかとなった。また、膜間差圧の上昇時において顕著に増加する微生物を同定した。これら微生物群は、油含有廃水処理中のMBRのファウリングや機能低下に関与することが強く示唆され、MBR運転時の膜ファウリングの指標微生物としてMBR診断に有効であることが示唆された。 H26年度においてRNA-SIP(Stable Isotope Probing)と次世代シークエンサーの融合による高感度機能微生物同定法により明らかとなったパルミチン酸分解関与微生物群、H27年度において明らかとなった油含有廃水処理における機能低下、膜のファウリングに関与する微生物群は、微生物学的知見に基づくMBRの高活性維持管理技術の確立に有用であり、重要な制御因子となりえる。
|