研究課題/領域番号 |
26550112
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研究機関 | 宮城大学 |
研究代表者 |
内田 直仁 宮城大学, 事業構想学部, 准教授 (50352753)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 木質エネルギー利用 / 薪ストーブ利用 / エネルギー政策 / 林業活性化 / 経済性と環境性の両立 |
研究実績の概要 |
①日本における木質エネルギー(薪)利用の新たな気付き 木質エネルギーは、その出力がく輸送を伴うと効率を著しく下げる。そのため、資源利用の地産池消化が重視されている。秋田県仙北市で、全軒で薪ストーブを利用している集落に取材を行った。里山の保有等の従来予測以外の大きな気付きとして、薪ストーブ設置や薪を作る技術と工具の所有があげられる。多くは、兼業農家であり、男手は土建労働者経験が多い。また、簡易かつ安価で高性能の薪ストーブの入手できる流通も見逃せない。このため、灯油ストーブより安価で快適な暖房の前提を支え、他の熱利用より優先利用されていると考えられた。 ②フィンランドでの気付き フィンランドでも、秋田同様に薪ストーブは、自己設置できる技量を国民の多くが有し、それを支える機器・物品の独特な流通が見られた。特に義務教育の技術教育では、溶接まで行っている事実を聞き驚愕した。日本では、フィンランドメゾット等の教育手法は有名であるが、義務教育時での技術教育については、ほぼ日本では研究対象にされていないと回答があった。唯一のエネルギー資源が木質ともいえる国で、この技術がその利用を支えているのは間違いない。この事実の存在は、当初は想像もしなかった。教育政策において、これらをエネルギー事情も想定して、技術教育を施策されているのか。また、薪ストーブに関する法制度や国家資格の存在も大きい。この人的背景の解明が、重要と考えられた。 ③二か国の共通項:木質エネルギーの豊富さと安価な機器・部材の流通、何よりもそれを加工できる住民の技術水準の高さが、木質エネルギーの熱利用の一般化の共通項と思われる。日本では、地方における公共事業による土建従事率の高さ。フィンランドでは、義務教育における技術教育の高さ。この技量の高さが、薪ストーブが日常的に利用できる経済環境を支えていると考えられ、その仮説検証を28年度は行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
仮説段階で想像しなかった、人材教育環境・国家資格の存在があり、木質エネルギーの熱利用を促進する重要な項目と考えられた。研究期間を延長することにより、その課題について研究する時間的余裕が生まれたため、研究進捗は順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
フィンランドへの再渡航を予定しているが、木質エネルギー政策でなく、それを支える義務教育における技術教育の現場と政策の取材を予定している。 日本においては、地方寒冷地域における安価で高性能な薪ストーブの独自流通について、流通・製造事業者の取材を予定している。 これらを包括して、国内森林資源のエネルギー化の推進につき、採算性と法整備の視点からの知見をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
取材研究を通じ、木質エネルギーの熱利用には、利用者の技術力、人材教育環境が大きくかかわることが判明した。特にフィンランドの義務教育下の技術教育の高さは、溶接等も行い、特筆すべきものがある。しかし、日本でその研究はなされていない現状であり、この解明が研究の方向性に大きくかかわると考え、研究の新たな課題に設定した。このことにより、研究計画を大幅に見直し、新課題の研究費に内容を振り替えた。
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次年度使用額の使用計画 |
①フィンランドでの技術義務教育の教育・政策現場の取材と資料の翻訳・分析に80% ②日本の安価で高性能の薪ストーブの独自流通・製造の解明に15% ③学会報告費に5%
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