1997年に実施した60人の日本人専門家の直感による中国の将来予測結果と2011年までの実測値とを比較すると、合計特殊死亡率、一人当たりGDP、都市化率などについて、大半の専門家の予想が大きく外れていた。一方で、各種指標間の関係については、予測の妥当性に係る検証がなされていなかった。そこで、平成28年度は、各種指標からGDP成長率を予測することの妥当性について、統計解析(パネルデータ分析)により検証した。予測の妥当性が認められれば、中国の経済成長に直結する要因の分析が容易になり、政策の優先順位付け等に資する情報が得られるものと考えられる。 研究の方法としては、60人の専門家による1993年から2015年までの23年分の予測データを基に、GDP成長率を被説明変数、その他の指標(一次産業の割合・合計特殊出生率・都市化率・潅漑面積・穀物の単位面積収量・一人当たり一次エネルギー消費量)を説明変数としたパネルデータ分析を行い、得られた結果と実績値を比較した。 結果は、以下のとおりである。パネルデータ分析によるGDP成長率の予測については、実績と概ねトレンドが一致していた。ただし、中国は2001年にWTOに加盟しており、その影響等により、2001年から2007年までGDP成長率は上昇トレンドにあったため、予測値と実績値は大幅に乖離していた。このように、予測をする際には顕在化していない政治的・経済的攪乱要因の取扱いについては、今後の課題である。また同様に、パネルデータ分析におけるモデルの選択についても、今後精査していく必要がある。
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