研究課題/領域番号 |
26560004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
堀 浩一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40173611)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 創造活動支援 / 適正技術 / 新興国 / 設計支援 |
研究実績の概要 |
本研究は、新興国において、新興国の技術者が自分たちで自分たちのための技術開発を行えるようにするために、新たな設計支援のプラットフォームを構築し、実際に新興国において実証実験を行うものである。 新興国においては、先進国には存在しない様々な制約が存在し、それらがしばしば技術開発を阻む。本研究の仮説は、それらの制約に直面した時に、第一原理に立ち返り、解決しようとする問題を見直すならば、新たな解空間を発見することができ、創造的に問題を解決できるのではないか、というものである。 実際に、アフリカのガーナに滞在して実証実験を行った。昨年度は、想定以上に制約が多すぎ、第一原理に立ち返ることを支援するような知識処理システムを提供するだけでは、どうしようもないことが分かったということを報告した。例えば、停電が多く、そもそも支援システムを走らせることもできないというような問題があった。 本年度も、ガーナで実証実験を継続したが、本年度は興味深い結果が得られた。それは、支援システムだけでは十分な支援を行うことができないが、現場を走り回ることと支援システムの組み合わせから、実際に創造的な設計と製造が実現できたという実例を得られたことである。電子部品のような先進的な部品は意外に入手できるのに、古典的なモータが入手できないという問題に直面した時、自動車解体工場で発電機を入手し、それをモータとして利用することにより、面白い設計と製造を実演できたという例が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、仮説として想定していた通りにはいかないという新興国の現実に直面した。 今年度は、当初抱いていた仮説を超えて、興味深い実例を得ることができた。 すなわち、支援システムだけでは駄目だが、現場での発見を組み合わせるとうまくいくという実例である。 来年度は、これを理論化したい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、我々が目指していたようなことを実現するための新たな手がかりを得ることができた。すなわち、創造的設計を支援するための支援システムだけでは不十分だが、現場での発見と支援システムをうまく組み合わせることにより、創造的な設計が新興国の技術者によりなされたという実例を得ることができた。 これは、新興国だけでなく、先進国においても当てはまることであろうと予想される。現在先進国において流行しているデザインワークショップには、残念ながら机上の空論に終わってしまっているものも多いと見受けられる。現場における発見や現場における適用と創造的設計支援の手法を組み合わせた時に初めて本当に創造的な設計が生まれるという可能性は大きい。 最終年度となる来年度には、その理論化を試みたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実証実験受け入れ先のガーナの側の状況から、当初の見込みよりも、ガーナにおける実証実験の回数を減らすことになりました。そのため、旅費と物品費の両方に残額が生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度も、新興国において総まとめの実験を行うとともに、これまでの成果を集大成した設計支援システムを構築することに予算を使いたいと計画しています。
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