本研究は、新興国において、新興国の技術者が自分たちで自分たちのための技術開発を行えるようにするために、新たな設計支援のプラットフォームを構築し、実際に新興国において実証実験を行おうとするものであった。新興国においては、先進国には存在しない様々な制約が存在し、それらがしばしば技術開発を阻む。本研究の仮説は、それらの制約に直面した時に、第一原理に立ち返り、解決しようとする問題を見直すならば、新たな空間を発見することができ、先進国におけるよりもさらに創造的な解が得られる、というものであった。 初年度、2年度、3年度の3年にわたって、アフリカのガーナにおいて、実証的に実験を行った。初年度においては、想定以上に制約が多すぎるという問題に直面した。例えば、停電が多く、そもそも我々が実験的に作成した設計支援システムを走らせることすらできない時間が多い、というような問題にぶつかった。第2年度においては、支援システムの効果もある程度はあるものの、むしろ、人間の足を使って走り回って、使える部品を発見したことにより解が得られた、というような経験を通じて、新興国における創造的な設計支援のためには何が効くのかという実証例を積み上げることができた。 最終年度の第3年度には、前年度までに積み上げてきた実証例を体系的に説明するためのモデルを構築することを試みた。設計製造の壁にぶつかった時に、何らかのトリガーが得られると、その壁を突破することができる。当初の仮説では、そのトリガーとして第一原理への立ち返りを想定していたが、実際に新興国で実験を行なってわかったことは、第一原理に代表されるような知識と、上述の例における発電機のような実世界中のオブジェクトと、アイディアを生み出す人間との相互作用が重要であるということである。そのモデルを確認すべく、最終年度においても再びガーナにおいて実証的な試みを行なった。
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