研究課題/領域番号 |
26560008
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松原 厚 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80243054)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 生産システム / 工作機械 / 組立 |
研究実績の概要 |
自律分散的な生産活動を行っている生産財の製造現場を対象として,生産システムの変動要因と現場の動的な計画方法を考慮した製造シミュレータの構築を行い,シミュレーション結果を現場データ(作業効率,工程納期遵守率)と比較して,作業設計ルール,作業因子の生産性ならびに生産状態への感度を分析する. 製造シミュレーションは管理部門で得られる統計値を利用し,その結果を作業現場視点で得られる情報と比較するために統計解析,可視化などのツールの開発を行う.この比較により,スケジューリングルール,作業ルールといった計画に関する基本事項の形式知化を行い,同時に現場リーダと作業者間の暗黙知や行動原理の存在についても洞察して,生産現場の特徴を活かした生産管理の在り方について考察を行う. 本年度は,実際の工作機械組立現場を対象とし,管理部門が作成した生産スケジュールに対して,バーチャルリーダが一定時間内に作業割り当てスケジュールを作成し,バーチャル作業者が作業を行うといったプロセスを模擬できるシミュレータを開発した.シミュレーションモデルでは,現場職長の作業配分とリスケジューリング方法を差立規則としてプログラム化し,確率的な要素として作業者毎のスキルに応じた作業時間,作業スペース数,部品欠品,作業時間ばらつき,作業不良(手戻り),作業者の欠勤を考慮し、需要変動のある計画に対して生産シミュレーションを行って稼働率、納期、残業時間数を評価する方法を考案した.差立方法を比較することで,複数工程を作業者に担当させること,ならびに作業時間を作業者の能力に応じて見積もることの稼働率と納期への影響を定量的に示した.また,シミュレーション結果が生産実績の特徴をとらえていることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度予定していた以下の項目を実行した. (1)複数の差立規則と変動要因を考慮した製造シミュレータを開発した. (2)製造シミュレーション結果と生産実績の比較を行った.特に,作業効率と納期という定量的な実績との比較を行った. (3)変動要因が存在する状況で,リーダの差立てdispatch ルールを変化させ,工程におよぼす影響を分析した.その結果,複数工程割り付けや実作業時間の予想がリーダにとって重要なスキルであることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
本手法を拡張して,シミュレーションと現場観察から,次の調査を行う. (1)作業スキル向上のための教育プラニング:作業者のスキルをどのような計画のもとに向上すれば,生産性を中長期的に維持できるかについて調査する.教育パターンをシミュレータを用いて定量的に比較する. (2)生産管理法のデザイン:リーダの差立のコアとなる部分については明らかになった.検証した差立規則のもとで,よりロバストな生産を行うために管理すべき内容について調査を行う. (3)海外工場との比較研究:同等の製品の製造を行っている海外工場を調査し,本手法が適用できるかを調査する.
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