本年度は,実際の工作機械組立現場の生産状態を分析するために,昨年度に開発したシミュレータを改良してより柔軟な計算予想を行い,現場の管理データと比較することで以下の結果を得た. (1)需要変動がない生産スケジュールで生産阻害要因の感度解析を行った結果、欠品率は納期や稼働率に与える影響が大きいこと,組立スペースを増やすことは必ずしも納期の改善にはつながらないこと,不良発生は納期と残業時間への影響があることがわかった. (2)どのような方針で作業者がスキルを獲得していけば,組織としての生産性を向上できるかについて,構築したシミュレーションモデルを用いて調査した.スキル習熟過程を模擬した作業者のスキルパターンを設定し,単純な差立規則を用いてスキルパターンが納期と稼働率,残業時間にどのような影響を及ぼすか評価した.その結果,1)単一工程の作業を遂行するスキルが不十分な段階では,概ね納期や稼働率の指標が悪化する、2)ある工程のスキルを100%獲得した後,他の工程のスキルを50%獲得した場合においても,1工程のみスキルが100%である場合と同程度の納期しか達成できず、残業時間が減る,3)他の工程のスキルを100%追加で獲得すると,納期,稼働率ともに向上するという結果を得た.すなわち,スキル習熟過程において、生産現場では一時的な納期遅延や稼働率低下が起こることを明らかにした.この対策として、追加の支援作業者を投入することで生産指標が改善するかのシミュレーションを行った結果,納期と稼働率はいずれも改善されたが,複数工程で100%のスキルを持つ作業集団の生産指標には及ばないことが明らかになった.
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