音場再生システムの性能評価を一般化することで,合理的な性能向上のためのパラメータを明確化することを大きな目的としている。このために平成26年度には,音情報入出力装置であるショットガンマイクを24本利用したシステムを実現した。それぞれのマイク単独の指向性などと合わせて,全体の指向性,方向別分解能を把握した上で利用している。また音場再生システムのプラットフォームとして,平成25年度科学研究費・基盤(B)「音場再生における工学的手法と芸術的手法の合理的融合に関する研究(課題番号:25282003)において構築した多チャンネル再生システムの中の24チャンネルスピーカアレイを用いた。評価対象として,24本のマイクとスピーカを一対一に対応させた簡易的な音場再生を行う環境を構築した。さらに24チャンネルマイクアレイを用いて境界音場制御を行うことも試み,両者の性能比較を具体的な題材として,評価手法の一般化を試みた。 当初原音場において24本のマイクで収録した信号と再生システムで出力した信号を再度24本のマイクで収録して直接的に比較する方法を想定していた。しかし,数の多さによる評価手法の煩雑化を避け,より簡易的で主観評価に近い指標を得るために,音場のインパルス応答を再収録して物理指標を算出する方法,ならびに再生信号をダミーヘッドで収録し,両耳間時間差,レベル差などを求める方法を試みた。特にダミーヘッドを対象にした検討では,移動音源を用いた評価を試みた。 結果として,低周波数域では境界音場制御が,高周波数域では簡易的な再生手法がより良い性能を有することなど,システムの違いを明確に把握できることが明らかになった。 これらの検討より,物理指標を用いた基本的な評価手法とともに,ダミーヘッドの両耳信号を用いた手法の有効性も明らかになった。
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