研究実績の概要 |
本研究の目的は,PC及びスマートフォンで使える視覚障害者用の「道路横断訓練ソフトウエア:Road Crossing Training Software,以下,ソフトウエアとする)を開発し,その有用性を明らかにするために,平成26年度は以下の手順で開発を進めた. 1.ソフトウエアに組み込む状況音の作成:「あたかも眼前を車が往来する音場」をここでは状況音と呼ぶ.複数の異なる状況音を音響VRで作成した.コンパクトカー,軽トラック,トラック,HV車などを用いて走行音やアイドリング音をPCM録音した.また環境音として雑踏音も録音した.それらのデジタル音声ファイルをサウンドスペースプロセッサで合成編集し,状況音を10種類作成した. 2.ソフトウエアのプログラム試作:次の事項を可能とするソフトウエア本体の試作を行った.(1)Windows以後のOSで動作する.(2)10種類の状況音を再生する.(3)横断判断のタイミングをキーボードで入力可能とする.(4)横断判断のタイミングの正誤を合成音声で出力する.(5)車輌の動きを表示する. 3.ソフトウエアのヒアリング:試作したソフトウエアを重度視覚障害者5名にモニタリングを行った.状況音の現実感,横断判断の正誤についてのフィードバック,操作性などについて聞き取り調査を実施した結果,以下のことが示唆された.(1)10種類の状況音は全て生活道路及び横断歩道の状況音としてリアリティが高い.(2)複数の車種の違いが聞き分けられた.HV車の音が聞き取りにくいことも改めて認識できた.(3)横断判断の正誤フィードバックをより明確にする必要がある.(4)横断判断のタイミングの難易度を工夫する必要がある.(5)車輌走行音以外の環境音,人の歩行音などの音を付加することで,より現実的な横断訓練に繋がる. これらを踏まえ,試作したソフトウエアの改善を行う.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に実施した聞き取り調査によって示された現行のソフトウエアの問題点及び視覚障害者当事者からの要望を反映させたソフトウエアの改善を行う. 1. 試作したソフトウエアの状況音の改良:VRによる横断状況の音場がわかりやすくなるように音声による状況の説明を付加する.また,状況音に含まれる車輌音や環境音を修正する.さらに,自動二輪車,大型車輌などの車輌をレンタルし録音を行い,車輌音の種類を増やす.加えて,雨音などの自然音,人の音声などを録音し状況音に付加する. 2. 横断タイミングの正誤のフィードバック:横断タイミングの安全/危険をいっそう明確にフィードバックするようにソフトウエアを改善する.さらに,ゲーム性を帯びるようにフィードバック用のサイン音を作成する. 3. 訓練プログラムの構成:生活道路と信号機付き横断歩道の2種類にソフトウエアを分割する.さらに,自立移動の初心者及び盲児を対象とした難易度の異なるソフトウエアを試作する. 4. ソフトウエアの操作性の改良:10種類の状況音のうち,任意の状況を直接指定できることや,同一の状況音を何度も再生できるようにするなど,ソフトウエアの操作性を改良する.
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