インタラクティブアート作品の展示において、体験者の短時間の行動観察に基づき、制作者の判断で作品のシステムの改良を施している現状がある。本研究はそれを鑑み、より長期間の撮影映像における体験者の行動について分析し、「インタラクションの深度」(理解度)について確認できることを目的とした。手順は以下の通りである。 1.全展示期間の映像データを撮影、保存する。2.体験者が存在する映像データのみを選別する。3.体験者の滞留時間、移動状態などを映像データから分析する。 1年目は実際の展示で撮影を可能とするシステムを別途開発し、作品のシステムに実装して複数の長期展示での録画を実施した。2年目は手順2.で取得した大量の映像データファイルから、動体検知プログラムを用いて体験者が存在する映像データファイルを選別した。最終年度の3年目は選別された映像データから作品のインタラクションの深度について確認した。得られた知見を活かした新しい作品を制作し、展示発表を行なった。 撮影映像から、対象となる作品"Dancing Mirror"では、長期展示期間を通してほとんどの体験者が短時間で作品のインタラクションと機能について理解できている状態を認識した。 2016年11月の国際学会ADADA Internationalでは実時間映像をより濃く投影するなどの改良を施した"Dancing Mirror"を再度展示発表した。また、研究代表者は期間中にカメラの映像入力と音声入力の2種類のインターフェイスを有した新規のインタラクティブアート作品"Sounding Kaleido"を制作、2015年7月以降11月Audio Artフェスティバル(ポーランド)、2016年9月国際学会Sound and Music Computing(ドイツ)にて展示発表、2016年12月渋谷子供科学センターハチラボでの長期展示を実施した。
|