本研究では,任意の場所に適切な明るさを提供するために,パン・チルト機構を備えた複数の照明機器から構成される「分散型ロボティック照明システム」の開発を行っている.本年度は,実験装置の改良および実物大の屋内での照度分布測定に取り組んだ. (1)実験装置の改良:これまでに,16個のLED照明を格子状に配置した1/8スケールモデルを製作している.従来の実験装置で問題となっていた機構部分の不具合(片持ち支持方式による全体的な角度の傾き)について改修を行い,照明ユニット毎の角度のばらつきを小さくすることができた.これにより,各LED照明は初期姿勢の状態においてほぼ真下を向いた状態から実験を開始することができるようになり,手動調整に要する労力を低減することができた. (2)制御アルゴリズムの開発:進化型計算手法を用いてLED照明のON/OFFパターン決定アルゴリズムを実装した.進化型計算手法は集中型のアルゴリズムであるが,本研究で構築した分散型アルゴリズムの解の良し悪しを評価するために利用する.ON/OFFパターンとLEDの照射角度を同時に決定する手法については今後の課題である. (3)検証実験:舞鶴赤レンガ倉庫群の空き施設を使用して,実物大の屋内での照度分布測定を行った.4台の投光器を天井からつり下げ,光の広がり方について調べた.また,複数の照明を重ね合わせた場合の照度分布についても調べ,これまでに作成した近似モデルが適用可能であることを確認した.
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