研究課題/領域番号 |
26560021
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
片桐 恵子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80591742)
|
研究分担者 |
久保田 裕之 日本大学, 文理学部, 准教授 (40585808)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 異世代間交流 |
研究実績の概要 |
本年度は高齢者と学生が共棲するホームシェア・プログラムの日本への導入に関して問題点を把握するために郵送調査とインタビュー調査を実施した。 第一には鶴甲地区住民調査のデータを用いて検討した。本研究で検討しようとしている異世代間交流プログラムは、欧米において開発されたものであり、そのまま日本の社会への適応が可能であるのかを検討するために、住民調査データを用いて検討する必要があったためである。 検討した内容は(1)高齢者と若者の異世代間交流に対する関心・考え方、2)異世代間交流志向に関連する要因、であった。 その結果、異世代間交流は若者で低く、高齢者の方が高いこと、女性の方が男性より高いという違いが観察された。さらに収入の低い人の方が異世代間交流志向が低いという基本的属性上の違いが観察された。しかし、本研究では、高齢者において一人暮らしである、健康状態が悪いという、自立して暮らすには少し手助けが必要とされる人たちにおいて、異世代間交流志向が高いと予測したが、そのような傾向は見いだせなかった。社会参加をしている人たちが異世代間交流志向が高かったという結果と考え併せると、異世代間交流志向はアクティブな志向性としての一つとして捉えられる概念と考えられる。 第2に高齢者住民に対するインタビューを男女4名ずつ実施した。全員異世代交流には関心が高かったが、若者との住居のシェアという形には都会の住居の狭さという問題もあり、あまり関心を示さなかった。しかし、一つの集合住宅の中に、若者が住むことには大いに関心があることが判明した。つまり、空き室になっている住居に若者に住んでほしいとのことであった。しかし、これまでにも大学生が団地内に居住したときに高齢居住者とうまくいかず、一年ででていってしまったとのことであった。若者も高齢者もともに暮らすための交流スキルを学ぶ必要があることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度では、世代間交流に対する住民の関心を把握する調査と研究の実施、参考になる国内外のプログラムの調査、及び調査結果の発表の実施を計画していた。以下それぞれ計画ごとに達成度を報告する。 〔計画1〕地域住民の世代間交流へのニーズ調査:異世代交流は高齢者世代の孤立の防止の観点から行政や研究者が実施することが多かった。しかし、現実に地域にすむ住民、高齢者が世代間交流に関心があるのか、したいと思っているのかという当事者のニーズがどの程度あるのかついては実はあまり調査されていない。そこで2012年度、2013年度に神戸大学のアクティブ・エイジング・プロジェクトが実施してきた神戸市灘区鶴甲地域での住民調査のデータを二次分析し、住民の世代間交流への関心とその関連要因を検討する。〔達成状況〕予定通り、分析をして要因を検討した。 〔計画2〕一人暮らし高齢者のニーズ等のヒアリング調査の実施:鶴甲地域に居住する一人暮らし高齢者に対して、生活の不安や不便について、また異世代交流への関心の有無などについてインタビュー調査を実施する。〔達成状況〕高齢者住民に対するインタビューを男女4名ずつ実施した。 〔計画3〕地域交流の拠点の活動例のヒアリング調査:ヨーロッパにおける地域住民の交流拠点でのヒアリング調査の実施〔達成状況〕ダブリンシティ大学、福井大学にて、異世代間交流プログラムについてヒアリングを実施した。 〔計画4〕上記調査の中間成果報告:日本社会心理学会、アメリカ老年学会にて上記調査の結果の概要を報告する〔達成状況〕日本社会心理学会にて発表した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定では平成27年度の計画は以下の通りであった。 1)世代間交流プログラムの策定:神戸市灘区鶴甲地域において異世代交流の地域交流拠点を設置する。地域の高齢者などのニーズをヒアリングしながら、地域拠点型の世代間交流プログラムを作成する。2)上記拠点において、一人暮らし高齢者の実態を調査するとともに、学生との共棲プログラム(ホームシェア・プログラム)の実施に向け準備。高齢者と学生をリクルート。3)地域交流の拠点の活動例のヒアリング調査:ドイツにける地域住民の交流拠点でのヒアリング調査の実施。4)上記調査の中間成果報告:日本社会心理学会、アメリカ老年学会、国際世代間交流学会、アジア社会心理学会にて上記調査の結果の概要を報告する しかし、平成26年度の調査結果によると、一つの住居内で高齢者と若者がシェアをするという当初の計画は、そのままの形では都会では適用しにくいことが予想される。よって本年度は、(1)日本において実現可能性のあるシェアの形を検討することを第一の課題とする。つまり、高齢者に対してどういう形の異世代間交流を求め、実現可能なのかということについてさらにインタビュー調査を実施する予定である。また、若者側のニーズはあまり高くなかったので、どのような形なら受け入れられるのか、インタビュー調査により検討を行う予定である。 (2)集合住宅内でのシェアという形のプランの策定。(3) 地域交流の拠点の活動例のヒアリング調査(オーストラリア等)。(4) 上記調査の中間成果報告:日本社会心理学会、アメリカ老年学会、国際世代間交流学会、国際老年学会アジアオセアニア地区学会にて上記調査の結果の概要を報告する
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主要な理由は、大きく3点ある。一つ目は物品購入費の節約である。コンピューターとプリンターを購入する予定であったが、他の研究助成金により購入したため、倹約が可能になった。第2に出張費の節約である。共同研究者である久保田との東京で打ち合わせを実施したが、他の研究会での出張や学会の委員会での出張の時期に調整して、出張費を抑制した。また、海外調査を平成26年度には実施しなかったという理由によるものである。
|
次年度使用額の使用計画 |
本年度の調査計画は4つある。(1)高齢者と若者に対するインタビュー調査の実施、(2)集合住宅内でのシェアという形のプランの策定。(3)地域交流の拠点の活動例のヒアリング調査(オーストラリア等)。(4)上記調査の中間成果報告:日本社会心理学会、日本心理学会、アメリカ老年学会、国際世代間交流学会、国際老年学会アジアオセアニア地区学会にて上記調査の結果の概要を報告する。 よって本年度の使用計画の概要は、上記の調査を実施するために、それぞれ(1)に伴う調査費用(インタビュー対象者への謝礼とテープ起こし費用32万円、分析ソフト購入費用等40万円)。(2)プラン策定のための打ち合わせのための出張費用(18万円)、(3)オールトラリアでのヒアリングのための出張費用(オーストラリアでの学会発表費用もあわせて48万円)、(4)学会発表費用(55万円)、(5)その他(5万)を予定している。
|