本研究では、沖縄県での先行研究を参考に、島根県の中山間の過疎地域における高齢者の在宅終末期ケアシステムを構築する事を目的として、医療資源の把握、住民主体の「いきかたカフェ」を毎月開催しニーズ調査をおこない、住民ニーズを把握した後に、中山間地域における在宅看取りの現状を質的に調査した。 初年度には、文献検討で離島と中山間地域の地域特性を調査した。その結果、中山間地域と離島・島嶼地域では、看護師はニーズを把握し、地域資源を活用した連携・調整・支援・相談をする事で、公助・扶助・共助・自助機能を最大限に活用した支援体制を構築していた。相違点には、孤立する地域での専門職者の意識の違いが示唆された。 主催した「いきかたカフェ」では、生きること・死ぬことについて自由に語れるようにした。また、毎年在宅看取りを経験した家族とその家族を支えた専門職が講演できるフォーラムを開催することで、実際の事例を一般市民にも開示し、専門職の支援体制の検討をおこなった。国際家族看護学会の参加から在宅看取りに関する支援の国際的な現状の把握もおこなった。さらに、新聞の連載として「いきかたカフェ」を掲載することで、腎がんの患者が病院から在宅医療に移行し看取るまでを、医療・福祉・介護・家族の視点で各14000文字程度のコラムを作成した。その経過の中で介護保険に関する情報が不足していることが明らかになり、まんがを用いた在宅支援書の作成をした。 質的研究は、人口5023人、高齢化率43.5%の中山間地域でおこなった。訪問看護師は、<療養者と家族の健康を支える看護>と、<死を迎える人の周囲の環境を整える看護>を行っていた。日本では死亡宣告は多くの場合医師なので「いざ看取り」という段階になると病院へ連携していた。訪問看護師が協働できるように橋渡しをしていた。
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