研究課題
本研究により、イオン(複数種イオン及び分子から成るナノサイズの超微小粒子)放出メカニズムの異なる複数の放出型空気清浄機による生体影響を明らかにした。まず、マウスへの吸入曝露試験の結果、一機種では28日間曝露により肝臓に軽度の炎症応答(血清中AST上昇を伴う)を認めたが、これは複数のイオン放出型空気清浄機に共通する所見ではなかった。一部の超微小粒子(とくに元素状炭素ナノ粒子モデル)の低用量曝露は、曝露経路が呼吸器(吸入、経肺instillation)の場合にも顕著な気道傷害なしに肝臓に急性期応答を誘導し、その影響評価指標として肝Saa3 mRNA量が有効である可能性が示された。以上の結果はイオンもしくはナノ粒子の曝露を、曝露チャンバー内のオゾン濃度上昇なしに行って得たものであり、当該イオンもしくはナノ粒子に特異的な生体影響を捉えたものである。環境中に放出される物質のリスクは、ハザード及び曝露の程度により規定される。すなわち、ハザードレベルは小さくとも室内環境で長時間、気密性の高い空間で使用する際の曝露量に注意を払う必要がある。ただし、少なくとも一部の被験機は電極の簡易清掃なしには、比較的短期間でイオン放出量が顕著に減少することが明らかになった。この知見は、清浄機製品に謳われている効果ならびに曝露(リスク)の両面を考える上で重要であると考えられる。当該イオンを含むナノ物質のリスクについては、特に米国Nova Science Publishers社から発刊された書籍"PM2.5 -Role of Oxidative Stress in Health Effects and Prevention Strategy-"のChapter 17、Fine and ultrafine particle risk management: Problems to be solved (Umezawa and Namba 2015) にまとめた。
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