研究課題/領域番号 |
26560036
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
小谷 賢太郎 関西大学, システム理工学部, 教授 (80288795)
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研究分担者 |
原 直也 関西大学, 環境都市工学部, 准教授 (00330176)
朝尾 隆文 関西大学, システム理工学部, 助教 (10454597)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自律神経活動 / 空間評価 / 快適性 / 生理指標 / 光環境 |
研究実績の概要 |
本研究は,安らぎ・癒し(副交感神経系)と快活性・活力(交感神経系)の両軸方向への自由な変化を住まい手自身によりコントロールできる空間が設計できないかという視点に立脚し,生体計測によって得られた空間特性と生理変動データを用いて,(1)空間の諸特性に対し生理指標がどれだけ変動するのかを実験的に導き出し,(2)この生理指標変動特性をもとに,随時生体信号をリアルタイムに解析しながら制御工学の手法で空間特性を変化させることで生体の自律神経系を調節し,活力や癒しを与えるシステムを開発し,(3)実際のモデルハウスベースで光環境に合わせて気流や窓の見えなどを変化させ,さらに効果的に自律神経系に作用させることで,「働きたくなる空間,くつろぎたくなる空間」を創出するものである. 本年度展開された研究の最初の狙いとして,空間設計のための生体信号の評価について基礎データを収集することから始めた.まず,自律神経機能の評価に用いることのできる生理指標として指尖容積脈波(DPG)の有効性に着目し,DPGと同時に計測する心電図を参照とした相関性からその有効性を推定する試みを行った.自律神経機能の変化をとらえる対象として,快適性評価の一要因である光環境変化を選んだ.実験参加者は健康な男子大学生8名で,実験場所は実験住宅の光環境実験室で行った.実験照度は2水準(0.5lx,2450lx)とし,照度計を使用して光環境実験室で調光可能な最大および最小照度の1分間の平均机上面照度を用いて統制した.結論として,周波数解析の結果に差はあったものの,時間領域では心電図と指尖容積脈波の相関性が高く,指尖容積脈波は心電図で得られる結果と共通した傾向を十分に示すことができる指標であると確認できた.今後,指先にセンサを固定したまま住環境内での何らかの作業を行う時の指尖容積脈波の有効性について検証していく予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度において,実験のための空間と統制条件の洗い出し,生体計測環境の整備はほぼ予定通り進んだと考えている.自律神経指標として心電図,および指尖容積脈波の計測プロトコルについても確立できたと考えている.交付申請時には空間特性,パフォーマンス,主観報告,生理指標それぞれの関係性について解析を行い,生理人類学とヒューマンインタフェースの両面の観点から発表する予定であったが,この計画は順調に進めることができた.なお当初本成果の学会での発表を年度内に行い,関係する研究者との議論を進める予定であったが,実際の発表は次年度(2015年5月)に繰り越すことになった.ただし,発表内容とその方向性に関する基本的な整理は完了している.採光と色環境についての変化要因についての実験は十分に進展しているとは言えないものの,生体指標の洗い出しが完了した点は本年度の大きな進展と言える.
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今後の研究の推進方策 |
当初予定では,平成27年度の研究対象として,その前年である平成26年度に構築・調整した自律神経系変動から,積極的快適性を創出するための空間条件モデルを構築し,このモデルを用いて生体信号をリアルタイムに解析し,推定された自律神経活動の状態から自動的に空間特性を変化させる生体信号フィードバックシステムを構築する予定であった.平成26年度の研究進展状況から考えると,当初予定通りの研究の推進が見込めると考えている.したがって,平成27年度から平成28年度にかけて主要な研究対象は生体情報を空間状態変化につながるための環境構築となる.また,生体信号のリアルタイム解析と制御への応用部分については平成28年度に予定していたものであるが,試作については平成27年度に進める予定を立てている.また,モデルハウスベースの実験は研究協力者と打ち合わせつつ,平成27年度中に可能な限り準備を進めたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度における生体信号計測とデータ解析手法の確立が当初予想以上に進展したことに対して,当初予定として組み込んでいた実験空間の構築については,その一部を次年度に回すことになった.結果的にはこの選択は全体の研究をより満足のいくものに進展させることができたが,比較的予算を必要としていた実験空間の構築を次年度に回したために,当該年度の予算が余ることになった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は実験空間の構築が中心となる.光環境以外の空間構築をおこなうため,空間構築用の部材を調達し,現有の光環境実験室に組み込んでいくための予算とする.また,交付当初から平成27年度に行う予定をしていた,空間変化に対する人の自律神経指標計測実験に必要となる実験者謝金,実験計測用電極,回路部品といった予算を執行する予定である.
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