日本の精神障がい者のための居住システムを今後考える上で有効なモデルとなる先進国の一つとして、精神疾患を持つ家族を対象としたファミリープログラムを開発し、その成果が世界で注目されているイギリスのバーミンガム市を取り上げ2014年9月に現地を訪問し、関係機関ならびに関係者にヒアリング調査を行った。調査対象は病院建築家、ソーシャルワーカー、看護師、病院経営者、心理研究者、社会住宅を供給してきた非営利住宅協会の関係者と公営住宅に住む精神障害を抱える当事者と家族である。また、見学した施設は日本の医療観察法施設にあたる重度の病院、女性専門病院、病院から地域生活へと移行するためのリハビリテーション住宅、公営住宅、シェルター、就労・相談機関を併設した社会住宅、園芸療法施設、青少年が気楽に相談できるセンターである。 その結果、1. 当事者の意見をまず尊重した多様な住宅が用意され、居住システムは医療、福祉、コミュニィティケアと連結した地域包括システムになっていること、2. 空間環境の重要性については、それを実証したエビデンスを基に、精神障がい者の方々固有に配慮しなければならない具体的内容がガイドラインとして示されていること、3. 当事者の意見を大事にした住宅を選択でき、そのための住宅手当が保証されていること、4. 賃貸住宅であっても壁や床の素材や色などは入居する当事者の意見を採用していること、5. スティグマを感じさせないような配慮が関係者に徹底されていることなどがわかった。
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