研究課題/領域番号 |
26560038
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研究機関 | 神戸松蔭女子学院大学 |
研究代表者 |
花田 美和子 神戸松蔭女子学院大学, 人間科学部, 教授 (70369411)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リユース / 使用感 / 着用感 / 品質 / リサイクル / 中古 / 衣類 |
研究実績の概要 |
平成28年度は、個人所有の婦人服と市場に流通している中古衣料214点(色は白あるいは黒)について、色あせ、毛玉、汚れなどのダメージを分析した。 1.衣類の色の経年変化について調べるために、着用年数のわかっている婦人服の測色をおこなった。その結果、白では黒ずみ、黒では色あせが数値化でき、さらに色相の変化をとらえることができた。また、子供服の古着13点についても調べたところ、子供服は婦人用よりも色の部位差が大きく、この色ムラも「使用感(着用感)」につながると考えられる。 2.色あせの程度と着用可不可との関連性について調べた。実験には、色あせが顕著な黒色のサンプル5枚を選択した。分光測色計によって測色した結果、L*値は2~13程度であった。被験者はこれらのサンプルを見て、外観から着用可能か不可能かの判定をおこなった。その結果、明度をあらわすL*値が10前後と最も色あせの程度が高いサンプルでリユース不可能と判断されている傾向がみられた。 3.毛玉の程度と着用可不可との関連性について、毛玉のあるサンプル、白黒各5枚について、JIS L1076 織物および編物のピリング試験方法のピリング標準判定写真3を用いて等級判定した。その結果、1級から5級までと毛玉の程度には幅り、衣類の部位によっても毛玉の程度が異なることが分かった。官能評価の結果は、毛玉のついている部位による影響が大きく、目立つところに毛玉があるとリユース不可能と判定される傾向がみられた。 4.色あせの程度と着用可不可との関連性について、汚れのあるサンプル白色各5枚を選択し、汚れの程度について、汚染用グレースケールを用いて等級判定をおこなった。その結果、等級は1-2から3-4まで幅があるなかで、リユース可能かどうかの判断は汚れの色の濃さだけでなく、汚れの面積にも関係していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究の目的は、リユース可能な衣類の品質レベルの定量化することであるが、平成27年度(2年目)は計画がやや遅れていた。平成28年度(3年目)の計画はさらに遅れている。特に2年目の計画に入れていた「衣類の変形(のび)」と「毛羽立ち」は予備実験段階であり、数値化に必要なデータが不足している。また、これらに関してリユース可能なレベルの評価する官能評価が、まだ実施されていない。研究が遅れている理由は、大量のサンプルが集まったため、ダメージの分析に時間を要したことと、本務校の新学科開設にむけての業務、所属学会での幹事・役員・編集業務で多忙であったためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度(4年目)の計画と推進方策は、3年目の計画とほぼ同様である。ただし、効率よく実施できるよう、研究費の使い方を検討する。 消費者が「使用感(着用感)」として捉えている「のび」「毛羽立ち」を数値化する。「のび」については、使用前の状態からの寸法変化率をもとめる手法を検討する。毛羽立ちに関しては、手触りの変化を、摩擦感テスターを用いて測定し、摩擦係数をもとめる。さらに実態顕微鏡で布表面の質的変化を観察し、毛玉、スナッグ(ひきつれ)、摩擦による損傷等と「使用感(着用感)」との関連性を検討する。のびと毛羽立ちのいずれにおいてもダメージを数値化し、リユースとして着用可か不可かの判断基準を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、以下の3点である。 ①物品費は、業務の多忙により研究が遅れたため、実験等に使用する新な物品等の購入がなされなかった。②旅費は、多忙により予定していた学会等への参加ができなかった。③人件費・謝金は、研究が遅れたため、経費を使用するに至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究を効率よくすすめるために、実験器具、パソコン、アプリケーションソフト等を購入を検討する。また、実験をアルバイトに委託するための人件費に充てる。謝金は官能検査の被験者等に使用する。
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