平成28年度は中古衣料214点を用いてダメージの程度とリユース可不可との関連性について検討した。しかしながら、リユース可不可に関わるパラメーターにはダメージそのものの特性だけでなく、ダメージの部位や面積などの複数の要素が関わっており、多面的に評価する必要があることがわかった。平成29年度は中古衣料の一部を見て着用年数を評価する実験を追加したが、その結果、衣服の一部分から着用年数を評価することは難しいことがわかった。このことから、人が中古衣料のダメージを評価するとき、ダメージそのものだけでなく、衣服全体から判断していると推察された。 平成26年度に実施した公開webアンケートの結果によると、中古衣料を利用しない理由として「誰が着たかわからない」という回答が多く見られた。このことから、ダメージが少なくても中古衣料は受け入れられないという層があることは無視できない。そこで平成29年度は、平成26年度の公開webアンケートの結果を踏まえて、対象者を20代から60代の成人男女に限定した質問紙によるアンケート調査を実施して、中古衣料に関する詳細なデータを得るとともに、ダメージの有無とは関係なく存在する「誰が着たかわからない」という不安を軽減する方法について、販売実験を通して検討した。 アンケート調査の結果、古着の出品者が知人の場合、古着への抵抗感が少なくなるという回答が多くみられた。また、よいと思う販売方法については「実物を手に取って見られること」「汚れの位置などダメージの情報があること」「購入年や着用年数が記載されていること」の回答が多かった。また、販売実験においても、古着に情報が付記されていることは購入者に好意的に受けとめられていた。これらのことから、古着の物理的ダメージの軽減のみならず、ダメージに関する情報を付帯させることが中古衣料の流通促進につながると考えられる。
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