研究課題/領域番号 |
26560039
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
平上 尚吾 兵庫医療大学, リハビリテーション学部, 講師 (60637643)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脳卒中片麻痺 / トイレ動作 / 重心動揺 / ビデオ観察 |
研究実績の概要 |
本研究は、回復期脳卒中片麻痺患者のトイレでの下衣上げ下げ動作の再獲得過程をビデオ観察と重心動揺計測等から検討することを目的としている。平成26年度では、1名のデータ計測が終了し、2名を計測中である。終了した1名は、下衣上げ下げ動作を見守りで行える者であり、初期測定から2週間おきに計4回(1.5ヶ月)の計測を行った。結果として、本症例は下衣上げ下げは自立には至らなかったが、経過の中で、静的立位での重心動揺の減少や下衣上げ下げの所要時間が減少し、機能改善を認めた。本症例を対象に、特に困難度が高いと言われている下衣上げに着目し分析した結果、改善過程で以下の変化が抽出された。1.重心の軌跡が麻痺側後方へ偏位し、非麻痺側下肢への荷重が優位になること。2.重心の軌跡長(cm/秒)が増大する傾向にあること、3.麻痺側、非麻痺側それぞれの足圧中心が、麻痺側では足底外側前方で著変ないが、非麻痺側では足底外側後方へと偏位していく傾向にあること。また、動作を録画したビデオ観察より、4.特に動作初期の前かがみの状態で下衣を操作する動作にて、麻痺側への荷重が増え、重心の軌跡変動が大きくなる傾向が伺えた。先行研究では、脳卒中片麻痺患者の下衣上げ下げ動作は麻痺側下肢への荷重優位で行われることがわかっている。本研究ではさらに、下衣上げの改善の背景に、非麻痺側下肢への荷重の優位性だけではなく、非麻痺側での足圧中心を足底外側後方へと偏位させた上で重心移動を増大させていること、さらには下衣上げの中でも重心の軌跡変動や荷重量に特に変化が生じる動作があることが明らかになりつつある。これらの知見は、脳卒中患者の行為の再獲得過程や困難度の高い動作の理解に繋がり、効果的な訓練への基礎資料となると考えられる。現在は一症例の知見であるが、今後もデータ計測を進め知見を蓄積していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
対象者の確保にやや難渋している。本研究では、対象者の選出基準を脳血管疾患発症から1ヶ月以上が経過していること、下衣上げ下げが自立していないこと、および認知機能障害がないこととしている。本基準に該当する患者はデータ測定開始から年度末にかけて少なかった。さらにトイレ内での下衣上げ下げというプライバシー性の高い動作を対象としていることや、2週毎にデータ測定があることにより、研究への協力が得られないケースもあった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、患者への研究協力依頼と対象者のデータ計測を実施する。対象者確保の方策としては、対象者の取り込み基準を自立して下衣上げ下げが行える者まで含め、さらに一回の計測のみであれば研究協力が得られる患者も対象とすることを考えている。これにより、下衣上げ下げについて介助があれば行える者、見守りで行える者、自立して行える者で分類して、現在進行中の縦断データ計測に加え、横断データ計測から患者間比較を行うことも視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費についてはデータ計測や学会参加目的で見積もっていたが、データを計測している病院へ出向く機会が予定より少なかったことや、本研究に関わる学会への参加が出来なかったため未使用額が生じた。また、人件費や謝金およびその他費用については、データ計測回数が少なかったことや、論文執筆や学会発表用資料に関わる費用が発生しなかったため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
旅費については、引き続きデータ計測や学会発表に関わる旅費として使用し、人件費や謝金およびその他費用についても、引き続きデータ計測および論文執筆や学会発表用資料に関わる費用として使用する計画である。
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