研究課題
本研究では、わが国に数多く伝わる伝統食品、特に塩蔵食品に着目して、近年の消費者の食嗜好をふまえたその食品の特性と製造及び保管の過程での安全性について、細菌学的な視点から明らかにすることを目的とした。元来、塩蔵食品は大量の塩を用いて製造されてきたが、近年では減塩化が進んでいる。食品の減塩化は生活習慣病の予防には効果的であるが、一方で、食品の保存性の低下を招くことから、食品の腐敗や食中毒などのリスクが上昇すると考えられる。故に、低塩分化した伝統食品の細菌性食中毒のリスクについて検討することとした。伝統食品の代表格である塩蔵食品の中でも、特に水産加工食品の塩辛類について市場調査を行い、現在市販されているそれら食品の特性について調査を行った。近年では製品の多様化が進み、様々な魚介類を使用し、また様々な調味料を添加した製品が製造されていた。元々、伝統的な塩辛では高濃度の食塩を加えていることから常温で長期間の保存が可能であり、それによって醸成された食品であったが、近年の製品の大部分は低塩分であることから、食品中での細菌の制御が不十分になり、醸成が十分に行われない和え物風の食品になっている。そのことから、食品中で不足する旨みを補う目的で様々な調味料が添加されていた。細菌学的な解析において、低塩分の各種の塩辛では食中毒菌の汚染は確認できなかったが、一般細菌数において比較的高い菌数が確認され、さらに常温保存が続いた状態ではそれが100倍以上に増加しており、細菌汚染リスクの高い製品であることがわかった。一方で、高塩分の各種の製品でも食中毒菌の汚染は確認されず、また一般細菌数は低塩分の製品よりも10倍程度低かった。さらにその製品を常温に保管した場合でも、一般細菌数の上昇は確認されなかった。これらのことから、近年の市販塩蔵食品は製造及び管理において、特に注意する必要があると考えられた。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
International Food Research Journal
巻: 22 ページ: 1761-1769
International Journal of Food Safety, Nutrition and Public Health
巻: 5 ページ: 137-150