大豆タンパク質は、優れた加工特性や栄養価値を備えていることから、様々な特定保健用食品や加工食品の製造に頻用されている。しかし、大豆タンパク質にはアレルギーを誘発するタンパク質(アレルゲン)が含まれており、その除去や低減化が求められている。一方、植物種子に含まれるタンパク質は芽生えの生長を支えるための窒素源として貯蔵されており、それらは発芽と芽生え個体の生長に伴って活性化するプロテアーゼにより分解されると考えられている。そこで我々は、大豆アレルゲンの中で最もアレルゲン性が強いことが知られているGly m Bd 30Kに着目し、それを特異的に分解するダイズ内在性プロテアーゼを単離して同定することとした。 前年度までの結果から、Gly m Bd 30Kは播種後13日目から減少し始め、播種後17日間生育させたダイズ個体からは検出されないことが明らかになった。したがって、播種後14日目から16日目のダイズ個体にはGly m Bd 30Kを特異的に分解するプロテアーゼが含まれていると考えられた。そこで次に、播種後15日経過したダイズ芽生え個体から温和な条件で調製した可溶性タンパク質溶液を試験管内(in vitro)にて30℃に保持(インキュベート)したところ、Gly m Bd 30Kの経時的な減少が観察された。このことから、Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼの存在が示唆された。しかし、播種後15日経過したダイズ芽生え個体から温和な条件で調製した可溶性タンパク質溶液にアスパラギン酸プロテアーゼの阻害剤であるペプスタチンAを加えてインキュベートするとGly m Bd 30Kの減少が観察されなかった。このことから、Gly m Bd 30Kを分解するプロテアーゼはアスパラギン酸プロテアーゼの一種であることも示唆された。
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