研究課題/領域番号 |
26560051
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
和田 有史 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品総合研究所食品機能研究領域, 主任研究員 (30366546)
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研究分担者 |
本田 秀仁 東京大学, 大学情報学環, 特任助教 (60452017)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 鮮度 / 光沢 / 画像解析 / デジタルカメラ |
研究実績の概要 |
人間の視覚による見かけなどから経過時間をある程度予測できると考えられる。さらに、デジタルカメラ画像を見るだけで、人間は生鮮食品の質感をよく感じ取ることができることから、一般のデジタルカメラ画像に豊かな鮮度情報が含まれていることは確かである。先行研究では、人間の視知覚による鮮度評価を画像に含まれる統計変量を分析することで定量化が可能であることがすでに示唆している(Wada.etal. 2010)。具体的には、キャベツの劣化過程に伴い、画像に含まれる輝度分布の変数が劣化時間の関数として変化し、それが鮮度の視知覚判断の規定要因となることを示している。 しかし、食品そのものの個体差、撮影環境の誤差、人間の個人差などの問題から、従来、デジタルカメラ画像に含まれる画像統計量と鮮度知覚・経過時間との関数関係を、実際の鮮度評価に利用することはできなかった。また、個体差によって、実際には経過時間は短いのに古く見えてしまいそうな個体も存在しうるが、その判断の指標となり得る数値化が実現できていない。これらの知見を流通過程での検査に適用するためには、「照明や撮影機材との距離や角度などの撮影条件による誤差を克服する撮影技術」と、「食品の個体差がある中でも輝度分布などの画像統計量が持つ情報を抽出可能とする分析方法」を開発する必要がある。 同一の経過時間の個体について、多くの照明条件で撮影すれば、それらの画像のどれかが最適の撮影環境になる可能性があると考え、分析を行った。トマトの鮮度劣化過程を、複数の位置のそれぞれの照明の下で撮影した画像から、輝度分布情報を抽出し、その変数を入力、経過日数を出力とする機械学習を行ったところ、比較的安定して、鮮度判定が可能となることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では初年度に複数の生鮮食品について、3D画像観察によって、2D画像観察よりも人間の鮮度知覚が安定するかどうかを検討する予定であった。しかし、画像撮影環境が早くに整い、本研究に用いるトマトの鮮度劣化過程の画像を初期の段階で入手できた。また、研究分担者を加えたことにより機械学習のプログラムも初期の段階で開発が進んだ。そこで人間による鮮度判断実験よりも先に、本研究の到達目的に近い画像の撮影、輝度分布変数抽出、ニューラルネットワークによる経過日数の予測まで、トマトを対象として実現した。また、キャベツについても、この方法で鮮度をある程度予測できた。これらの結果に基づき、「デジタルカメラ画像データを用いた鮮度判定方法」の特許出願を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、複数の生鮮食品について、デジタルカメラ画像から安定的に人間が感じる鮮度予測を行うことである。そこで、より多くの生鮮食品についての画像撮影と鮮度予測を行う。また、それが人間の鮮度判断に対応しているかを検証するために、心理物理実験を追加する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は撮影用のデジタルカメラを購入する予定だったが予定機種を入手できずに中止した。また、研究分担者を追加することができ、それにともない、心理学実験実施を次年度に延期したため研究実施補助者の雇用費が減少したため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
画像分析および人工画像作成のために使用するMatLab の保守契約を行う。心理学実験の画像撮影、分析と実験を実行するために研究補助者を雇用する。学会発表や調査のために、研究代表者及び実験補助者の旅費および学会参加費を支出する。
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