自然免疫応答は,異物の侵入を防ぐ最前線の免疫システムであり,その活性化は,病原体などを構成する構造体(PAMPs)をパターン認識受容体(PRRs)が認識することによって活性化される.パターン認識受容体としては,細胞外の異物等の認識にかかわるTLRまたは,ウイルス感染などによって細胞質に導入された核酸を認識するRIG-Iなどが報告されており,その認識メカニズムの詳細が明らかにされつつある.本研究課題においては,健康の維持や疾病の予防を目的とした基礎研究として,食品由来の核酸による免疫応答について解析を行った.食品由来の核酸による免疫応答の活性化を検討するため,数種類の野菜などから核酸を抽出し,免疫細胞の一つであるマクロファージを用いて自然免疫応答の活性化について検討した.その結果,インターフェロンなどの遺伝子発現が誘導されることをqRT-PCR法,タンパク質の発現をELISA法で確認することができた.また,LL-37合成ペプチドを用いてマクロファージに対して共処理をすることによりインターフェロンの発現誘導がみられ,さらにインフルエンザウイルスを用いた実験系において,qRT-PCRを用いた解析からウイルスRNA量が減少した.そこで,食品由来の核酸の性状を検討するため,超音波破砕装置を用いてDNAを断片化し,細胞に対して処理を行った結果,核酸の長さを短くすることにより活性化が強く誘導された.さらに,これら核酸を介する免疫応答の活性化がどのような経路を介するか合成siRNAを用いて検討した.その結果,RIG-Iを介する経路が活性化されることがわかってきた.以上の結果から,マクロファージに取り込まれた食品由来の核酸は,細胞質に存在するセンサー分子により認識され免疫応答の活性化に関与することが示唆された.
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