研究実績の概要 |
食品機能成分が効果を発揮するために、生体への吸収は本質的に重要である。我々はペプチド輸送体の新規解析システムを開発することで、8,400種類のジ・トリペプチドを認識する“基質多選択性”の全貌を解明した。その結果からペプチド輸送体は基質分子中のアミノ酸様の物理化学的特徴を曖昧に認識することが明らかとなり、さらに、アミノ酸を生合成原料とする二次代謝産物(食品機能成分)も輸送基質となることが示唆された。そこで本研究課題では、ヒトペプチド輸送体の基質多選択性を基に食品機能成分の親和性を予測・解析することで、食品機能成分がペプチド輸送体を介して吸収される可能性を検討した。本年度の研究では、腎臓ペプチド輸送体であるhPEPT2、腸管ペプチド輸送体であるcePEPT1の基質多選択性について、基質認識の分子間相互作用メカニズムを、544種類のアミノ酸指標や物理化学的指標を用いた重回帰分析により明らかとし、その結果を基に、90%以上の精度をもつin silico親和性予測プログラム、すなわち新規基質探索プログラムを開発した。いずれのペプチド輸送体においても“Normalized van der Waals volume”や“Isoelectric point”等のアミノ酸指標に基づいて基質を認識すること、またその結果として、ヒト必須・準必須アミノ酸含有ペプチドを優先的に輸送することが明らかとなった。in silico解析と生化学的解析を組み合わせて基質候補を探索した結果、脳機能改善効果の報告されている食品機能成分であるS-アデノシルメチオニンがペプチド輸送体へ比較的高い親和性を示すことを見出した。現在、S-アデノシルメチオニンがペプチド輸送体を介して吸収されるかどうかを検討中である。また本研究で開発したin siloco親和性予測モデルが医薬品の親和性予測に応用可能かどうかについても各種医薬品類縁化合物を用いて検討を進めている。
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