研究実績の概要 |
【方法】胃腸内を想定し、各種pH条件下 (pH2.4~8.0) におけるブドウ球菌エンテロトキシンA (SEA) とカテキン類の相互作用について、Western blot解析を用いて検討した。また、マウス脾臓細胞を用いて、SEAにより誘導されるIFN-γ産生に対するEGCGの阻害能をELISA法およびリアルタイムRT-PCR法により測定した。さらに、SEA産生株の溶菌メカニズムを明らかにするために、リアルタイムRT-PCRを用いて、透析共培養中のNo.29株の自己溶菌関連遺伝子の発現量を測定した。また、SEA遺伝子伝播の解明に向け、次世代シーケンサーを用いて、黄色ブドウ球菌の参照ゲノム塩基配列をもとに、No.29、No.77およびNo.77-L22株のゲノムリシーケンシングを行い、SNP解析およびSEA遺伝子の挿入位置解析を行った。 【結果・考察】EGC、ECGおよびEGCGは、各種pH条件下においてSEAとの相互作用が認められ、その強度は、同モル濃度で比較した場合、EGCG>ECG≒EGCの順であった。また、EGCGは、SEAとの相互作用に伴い、IFN-γの発現および産生を抑制している可能性が示唆された。透析共培養中のNo.29株の自己溶菌関連遺伝子の発現量を測定したところ、共培養12時間では、endolysinであるlytM、atlおよびholin-like proteinであるlrgAの発現量が有意に増加した。これらの結果より、No.77株の菌体外産生物質により、No.29株のendolysinおよびholinが活性化され、自己溶菌が誘発されていることが示唆された。SNP解析の結果、No.29株由来のSEAファージがNo.77株に導入されたことにより、1,103個のSNPが追加されたことが明らかになった。現在、No.77-L22株のSEA遺伝子の挿入位置を解析中である。
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