研究課題/領域番号 |
26560066
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
徳本 勇人 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70405348)
|
研究分担者 |
木下 卓也 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90453141)
星 英之 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (30301188)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ナノ粒子 / 粒径 / 腸内細菌 / 嫌気発酵 / 食品添加物 / マウス / 経口投与 / 菌叢 |
研究実績の概要 |
ナノ粒子をマウスへ経口投与し、排出した腸内細菌を培養することで、食品添加物ナノ粒子が消化管内を経由して菌叢に与える変化を解析することを目的とした。公称径0.3、1.0 μmのFe2O3粒子を用いた。これを50 mg/Lとなるように純水中に分散させ、ナノ粒子分散液とした。動物育成棟で飼育しているマウス(Mus musculus)にFe2O3粒子を生理食塩水に分散させて経口投与し、ナノ粒子が混在した腸内細菌を採取した。 経口投与した粒径0.3 μmの粒子の体外排出率は、1、3、7日後では22.5、15.8、0%となり、同様に粒径1.0 μmの場合では、1、3、7日後は10.7、7.5、0%となった。経口投与は、ゾンデを用いて毎週月曜日に行い、合計で4回行った。投与量は0、1.6、8.0 mgとした。経口投与後の腸内細菌(糞)は毎日採取し、嫌気発酵試験を行った。その結果、投与1日後で、粒径0.3 μmのFe2O3ナノ粒子を1.6 mgまたは、8.0 mgで投与した場合では対照と比較すると、生成したH2はそれぞれ80%と57%に減少し、粒径1.0 μmを投与した場合ではそれぞれ23%と48%に減少した。一方、マウスの体重は、飼育期間中に変化はなかった。 経口投与1日後に採取した腸内細菌による最終H2生成量は対照で5.59 mLであったが、粒径1.0 μmのナノ粒子を投与した場合は4.29 mLであり、粒径0.3 μmのFe2O3ナノ粒子を投与した場合では、1.14 mLまで減少した。0.3 μmのナノ粒子は排出1日後には顕著に影響が見られたが、腸内での滞留時間が短いため、3日後以降では有意な変化が無かった。一方、1.0 μmのナノ粒子は、0.3 μmほどH2生成量を減少させなかったが、腸内で長く滞留したため、腸内細菌叢へ長期的な影響を与える可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスへの食品添加物ナノ粒子の経口投与実験の環境が整備され、また、初期データとして、マウス体内におけるナノ粒子の挙動、腸内細菌叢への影響が確認できた。
|
今後の研究の推進方策 |
一般的な複合菌叢(嫌気発酵排水等)を用いて、各種食品添加物ナノ粒子が菌叢に及ぼす影響を網羅的に調べる。その過程で、ナノ粒子により変化した菌叢を修復する現象を、発酵食品(ヨーグルト、ビオフェルミン)を用いて探索する。 菌叢変化の要因となる微生物種をPCR-DGGE法により解析し、菌種を特定する。また、この菌種を用いてナノ粒子の付着実験を行い、その様子を原子間力顕微鏡により観察する。 ナノ粒子については、表面修飾を施し、経口投与実験を経て、菌叢変化を与える要因を特定する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
動物実験に対する学内申請において、許可が出たのが9月であったため、実験計画が6か月遅れた
|
次年度使用額の使用計画 |
菌叢解析に要する備品、消耗品により執行予定
|