研究課題/領域番号 |
26560066
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
徳本 勇人 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (70405348)
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研究分担者 |
木下 卓也 関西大学, 工学部, 准教授 (90453141) [辞退]
星 英之 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (30301188)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腸内細菌 / 菌叢解析 |
研究実績の概要 |
昨年度は経口投与針を用いて、マウスに食品添加物ナノ粒子を投与して実験を行ったが、今年度は粉末の飼料に、公称径0.3 umのFe2O3 NPsを0.014, 0.14%、1.0 umのFe2O3 NPsを0.007, 0.07%の含有率で混錬して給餌し、腸内細菌を採取して培養実験に供した。 その結果、粒径に関わらず、投与量の多かった腸内細菌ほど、培養実験において、その代謝産物が対照より増加することが明らかとなった。このとき、粒径の小さい0.3 umのFe2O3 NPsを投与した場合では、飼育している全てのマウスが下痢を発症した。 また、このときの腸内細菌叢のDNAを抽出し、次世代シークエンサーで構成菌種の存在割合を解析すると、Clostridiaceae科とLactobacillaceae科が菌叢中で優勢化していた。さらに、下痢の発症前後の菌叢解析結果から、粒径の小さいFe2O3 NPsを過剰に摂取すると、Clostridiaceae科が腸内細菌叢中で優勢化し、下痢が治癒した後の菌叢においては、Lactobacillaceae科の存在割合が増加していることが明らかとなった。加えて、このときの有機酸生成量を測定すると、下痢を発症したときは乳酸生成量が増加し、下痢の治癒後は酢酸生成量が減少することもわかった。 以上より、Fe2O3 NPsを過剰に投与すると、腸内細菌叢が変化し、Clostridiaceae科が腸内で優勢化すると、マウスが下痢を発症し、その後、下痢の治癒に伴ってLactobacillaceae科が優勢化すると、乳酸生成が促進されると同時に、酢酸代謝が抑制され、ナノ粒子投与による菌叢構造の一時的な崩れが、安定化に向かうのではないかという可能性が示唆される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ粒子投与による腸内細菌叢の変化に対して、培養実験による代謝産物量の測定や菌叢解析による原因菌の特定ができた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度末までに菌叢構造を変化させる微生物種が2種類特定できたため、この2種の微生物をin vitroで混合培養し、ナノ粒子の投与による優勢化菌を同定する。また、粒子の物性(粒径等)を変化させたFe2O3 NPsや、他の食品添加物ナノ粒子をマウスに経口投与する実験を行う。また、ナノ粒子により変化した腸内細菌叢を修復する現象を、乳酸菌を用いて行う予定である。
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