研究実績の概要 |
平成28年度においては、Fe2O3ナノ粒子に加え、TiO2NPsについても検討を加えた。Fe2O3ナノ粒子は水に対して可溶性であるが、TiO2N粒子は不溶性である。公称径0.8 μmの乾燥状態のTiO2 NPsを実験に用いた。まず、マウスを5匹ごとに4条件にふり分けて飼育を行った。マウスの粉末飼料に、粒径0.8 µmのTiO2 NPsを0.05, 0.15, 1%の含有率で水と共に混錬した。混錬物をペレット状に成形して乾燥させた。その後、マウス飼料として給餌し、採取した糞を腸内細菌叢として、培養実験及び菌叢構造解析に供した。 マウスを5匹ごと、4条件にふり分けて飼育を行った。粉末飼料にTiO2 NPsを加え、水とともに混錬したものをペレット状に成形し、乾燥させた。調製した飼料をマウスに4週間給餌し、腸内細菌をケージごとに採取した。TiO2 NPsの経口投与期間中は、体重、飲水量、摂餌量に変化がなく、健康状態に異常は見られなかった。そこで、TiO2 NPsの経口投与21日目に採取した腸内細菌を4日間培養した時の、糞便1 gあたりのバイオガス生成量測定した。その結果、Controlと比較して、TiO2 NPs含有率が高いほど水素、二酸化炭素生成量が増加した。 ここで、次世代シークエンサーを用いて菌叢構造を解析すると、TiO2 NPsを0.19 g/kg-体重以上摂取すると菌叢構造が変化し、さらに過剰量のTiO2 NPsを投与すると菌叢の多様性が損なわれる可能性が示唆された。これは、腸内細菌叢の表面にTiO2 NPsが付着することにより、腸内有用菌の生育が阻害され、腸内有害菌が増加したためではないかと考えられる。 以上より、不溶性のNPsにおいても、過剰な摂取により腸内細菌叢が崩れることが明らかとなった。
|