研究課題/領域番号 |
26560067
|
研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
坂上 元祥 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (20283913)
|
研究分担者 |
伊藤 美紀子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (50314852)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 統合失調症 / フレイリティー / 低栄養 / 骨粗鬆症 |
研究実績の概要 |
統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害は、精神疾患の中でも最も在院日数の長い疾患である。患者の中には長年にわたる疾病の影響などで低栄養となっている者も多く、虚弱や筋肉減少症との負の連鎖が見られる。また、骨粗鬆症の発症も増加していると思われる。そこで本課題を行うため、2014年度では統合失調症による長期入院患者の身体の状況、骨代謝などを詳細に調査・解析し、その実態を明らかにした。対象は播磨地域の精神科病棟に長期入院している40~60代の比較的自立での高い統合失調症患者25名(男性16名、女性9名)である。骨代謝マーカーの測定を行うため、骨代謝に関わる薬を服用している者は対象から外した。測定項目は(1) 身体測定:患者の身長、体重、BMI、腹囲、内臓脂肪指数、体脂肪率、筋肉量。(2) 筋力としては握力を測定。(3) 骨密度測定(踵)。(4) 骨代謝に関わる項目の血液検査:血清カルシウム、血清リン、骨代謝マーカーである。 対象者の年齢は、57.5±7.3歳、総入院期間と病歴は20.8±13.8年、32.5±11.5年であった。身体測定の結果、BMIは普通体重に属する者が多かったが、体脂肪率や内臓脂肪指数は全体的に高かった。腹囲の平均値も男女とも高めであった。また、筋肉量は著しく少なく、特に下肢筋肉量が同体格での平均値と比べても少なかった。筋力も全員が基準値未満であった。今回の対象者の中で、筋量サルコペニア有病率は男女ともに100%であった。また、筋力サルコペニアの有病率は男性66.7%、女性44.4%であった。骨密度の測定を行うと8割を超える者が骨粗鬆症の診断基準にあった。 統合失調症による長期入院患者では、BMIの割に体組成的には肥満傾向が強く、筋肉量や筋力は著しく少なく、サルコペニア有病率は非常に高かった。今後虚弱をもたらす要因の解明に多角的に取り組んでいくことが必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度においては調査フィールドを設定した。調査の初年度であったので、研究機関から比較的行きやすい播磨地域の精神科単科病院とした。統合失調症患者の栄養摂取量調査と栄養アセスメント、統合失調症患者の栄養摂取量調査と栄養アセスメント、統合失調症患者の栄養摂取量調査と栄養アセスメントを実施した。今回は入院患者を対象としたため、栄養摂取量調査は主に間食摂取量調査とした。病院関係者からの協力も得られ、2014年秋に調査が実施できた。問題点は、長期入院者には高齢者が多く、40~60代の自立して生活ができる患者が想定外に少なかったことである。本課題では対象者数を80人程度を目指していたが、25人になってしまった。しかし、対象者の身体の虚弱が強く、この人数であっても有意な結果が得られ、2015年度以降の調査への影響は全く出なかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2015年度は調査人数と調査項目を増やし実態調査を行う。また、昨年調査した患者を対象に栄養や運動などの生活習慣の支援プログラムを作成し、病院スタッフとともに実施できるよう連携を行う。支援プログラムの作成は2015年度前半期の行い、少数の対象者にパイロット的に実施する。これによって実施可能と判断できれば、2015年度後半から本格的に支援プログラムを実施してその効果の判定を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
調査対象者数が予定より少なく、調査の従事者への謝金と旅費、臨床検査会社への支払いが予定ほどにはかからなかった。また、2014年度には調査用機器を購入予定であったが、実際には調査した医療機関のものが借用でき、購入を翌年度に延ばした。このために翌年度への繰り越し金が発生した。
|
次年度使用額の使用計画 |
2015年度ではほかの医療機関での調査を行うので、購入を引き延ばしていた調査機器を2014年度からの繰越金で購入する。また、2015年度では調査対象者が増加するので、調査従事者への謝金と旅費、臨床検査会社への支払いが増え、2015年度分の予算を越える。不足分は繰越金を当てる。
|