研究実績の概要 |
本年度は昨年度用いたマクロファージだけではなく,下記の通り,炎症惹起したいくつかの免疫系細胞に対する炎症抑制効果を調べた。その理由は,マクロファージ以外にも炎症機構を有する細胞群はいくつかあるため,食品成分の抗炎症作用をスクリーニングする際に,異なる種類の炎症細胞を用いて検証することは,正確性の証明において非常に有利であると考えたからである。 ①樹状細胞を用いた食品中成分の抗炎症効果及びバイオマーカーの検討について ヒト末梢血単核球(PBMCs)を調製して樹状細胞に分化させた後,LPS刺激により炎症惹起させた後,食品成分の炎症抑制効果を調べた。炎症バイオマーカーとして,サイトカイン4種類(TNF, IL-1b, IL-6, IL-12)及びケモカイン6種類(CCL2, CCL3, CCL8, CXCL9, CXCL10, LTA)の産生量を調べた。その結果,食用キノコであるタモギタケ及びコウタケ中の非多糖画分,ウチワサボテン熱水抽出画分に,炎症性サイトカインの産生を抑制する効果が認められた。中でもTNFおよびIL-6についてはLPS刺激による初期段階で発現上昇が認められるため,迅速な測定方法の確立という観点から有用なバイオマーカーとして期待できた。また樹状細胞も,抗炎症性食品成分のスクリーニングに有用であることが示唆された。 ②単球およびマクロファージに対する食品中成分の抗炎症効果 本年度は単球における遊走性と,炎症惹起型マクロファージに対する炎症性サイトカイン産生についての影響を調査した。その結果,単球に対する抗炎症効果として,タモギタケ非多糖画分に,単球に炎症誘導を抑制した際に見られる遊走性(運動性)の増加がみられた。しかしながらマクロファージに対する効果については,前年度までに明らかにしているコウタケ非多糖画分以外で候補となり得る成分は未だ見つかっていない。
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