研究課題/領域番号 |
26560074
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研究機関 | 別府大学 |
研究代表者 |
木村 靖浩 別府大学, 食物栄養科学部, 教授 (90549792)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 核酸系旨味物質 / 炎症性腸疾患 / AMPK / 抗炎症作用 |
研究実績の概要 |
細胞内のエネルギーセンサーであるAMP-Activated protein kinase (AMPK)の活性化が、エネルギー代謝の調節のみならず免疫機能の調節にも関与することが明らかになり、免疫異常を主徴とする疾患の治療に注目されつつある。潰瘍性大腸炎マウスにおいてAMPK 賦活剤投与により大腸組織炎症性サイトカインの産生抑制を介して大腸炎が軽減されることが確認されている。 そこで本研究は、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導性慢性大腸炎(IBD)マウスにおいて核酸系旨味物質であるアデノシン一リン酸(AMP)の投与が大腸組織のAMPK を活性化し、病状の改善に有効であるかを調べた。さらにAMPの構造類縁体の核酸系旨味物質、イノシン酸及びグアニル酸の有効性についても調べた。 マウスにDSSを3%含む飲料水を0~5日目、13~15日目、20及び21日目に与えてIBDを惹起した。AMPは精製粉末飼料に0.3%混合し自由摂取させた。対照IBDマウスには精製粉末飼料を与えた。AMPは、IBDマウスの下痢及び血便の程度を軽減した。また大腸病理組織検査では、AMP投与により大腸粘膜の炎症の程度が抑制された。さらにそのときの大腸組織AMPKの活性化をイムノブロット法にて確かめたところ、AMPはAMPKを活性化した。このようにAMPは、大腸組織AMPKを活性化し、大腸炎の症状を緩和することがわかった。また、イノシン酸にも作用の程度はAMPに比べやや劣るが、AMP投与と同様に大腸組織AMPKを活性化して大腸炎の症状を軽減した。一方、グアニル酸にはAMP及びイノシン酸投与で認められた大腸組織AMPKの活性化と大腸炎の症状を緩和する作用は認められなかった。 以上ように一部の核酸系旨味物質に大腸組織のAMPK活性化を介して、抗炎症作用を有する可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究計画に基づいてほぼ順調に進行している。核酸系旨味物質のAMP及びイノシン酸を慢性大腸炎マウスに投与したとき、大腸組織AMPKを活性化し、慢性大腸炎の症状を緩和する作用が認められた。このように一部の核酸旨味物質に抗炎症作用があることを示す知見を得ることができたと考えている。このことは、この時点での研究目的はほぼ達成したと考えている。ただ、同時に大腸組織の炎症指標として、炎症性及び抗炎症性サイトカイン濃度を測定したが、測定データにバラツキが大きく、差異を認めるには至らなかった。そのため、今後は大腸組織炎症性及び抗炎症性サイトカイン濃度に及ぼすAMP及びイノシン酸の影響に焦点を当て実験を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に行った動物実験を再度実施し、AMP及びイノシン酸の作用の再現性を確認し、さらに平成26年度に実施した実験で十分に確認することができなかったAMP及びイノシン酸が炎症性大腸炎で上昇すると報告されている大腸組織炎症性サイトカイン(TNF-α、INF-γ、IL-17)、及び抗炎症性サイトカイン(IL-10)の産生に影響するか否かを確認する。また、上述の核酸系旨味物質が炎症反応の引き金となるシグナル伝達系の核内転写因子NF-κBの大腸組織発現に影響するかを併せて調べ、核酸系旨味物質の抗炎症作用の作用メカニズムを探索する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は数万円程度で、平成26年度配分予算はほぼ計画通り使用したと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、平成27年度配分予算と併せて、実験動物、飼料、試薬類及びサイトカイン測定キットの購入、病理組織学検査料などに充てる予定である。
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