研究課題/領域番号 |
26560077
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研究機関 | 独立行政法人水産大学校 |
研究代表者 |
臼井 将勝 独立行政法人水産大学校, その他部局等, 講師 (50399656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エビアレルギー / 胃粘膜環境 / トロポミオシン |
研究実績の概要 |
【胃粘膜傷害惹起法の確立】胃粘膜傷害モデルにはマウスを用いて①水浸拘束ストレス負荷②高濃度アルコール投与による急性胃炎誘導にて行った。胃粘膜の傷害の有無,重症度評価は実体顕微鏡による胃内壁の観察にて行った。①ストレス負荷群,ストレス負荷+アトロピン群,コントロール群の3群の比較にて評価した結果,8時間のストレス負荷時間により顕著な急性胃炎の発症が確認できた。また,この胃炎はアトロピンの事前投与により完全に抑制できた。②高濃度アルコール投与はエタノールを濃度100%, 75%, 50%, 25%として投与量を200, 100, 50 ulに設定して,急性中毒の防止を含めて条件を検討した。その結果,50%エタノールを100 uL/mouseの条件下で最も安定した急性胃炎を誘導できた。 【トロポミオシンの精製】本研究に用いるエビアレルゲンの分離精製を行った。クルマエビトロポミオシン(以降Pen j 1と省略して記載)は解凍生クルマエビ尾部筋肉を原料とし,破砕後に4℃にて一晩抽出した後に,等電点沈殿,硫安分画,イオン交換クロマトグラフィーにてSDS-PAGEで単一のバンドが得られるまで精製した。本年度の精製で約200 mgのPen j 1が得られた。 【胃粘膜傷害のエビアレルギー重篤化への影響の評価】精製Pen j 1を皮下投与してアレルギー化させたマウスにストレスを負荷し急性胃炎を誘導した後に,Pen j 1を経口投与して血清中の抗Pen j 1抗体量を調査した。その結果,ストレス負荷群のPen j 1特異的IgE抗体量はコントロール群に比べて有意に上昇した。しかしストレス負荷+アトロピン群においてもコントロール群に対して有意な上昇がみられ,上昇率はストレス負荷群を上回った。この結果は胃粘膜傷害よりもストレスまたはアトロピンによる消化機能不全の方がIgE産生により強く影響したためと考えられた。よって,実験系の改善,すなわちアルコール性急性胃炎系への変更が必要であると判断した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
胃粘膜傷害については,ストレス負荷法およびアルコール投与法の2手法によって誘導することが可能となった。加えて,エタノール濃度や投与量を増やすことでより顕著な粘膜傷害を誘導できたが‘酒酔い’の程度が強くなるため50%, 100 µLを超える投与は適さない事,胃粘膜傷害はストレス負荷によるものの方が顕著で個体差も少い事,アルコール投与ではエタノール濃度によって症状を調節できる可能性が示唆された。これらの事から順調に目標を達成できていると考える。また,エビアレルゲンの精製も順調に進み200 mgが確保できた。次年度にも数回の精製を行うことで研究資源不足はおこらないと考えられ順調である。さらに胃粘膜傷害のエビアレルギー重篤化への影響の評価についても,ストレスやアトロピンの影響が示唆されたので,実験系をアルコール投与法に切り替えて再検討中であるのでおおむね順調であると考えている。 なお,これらの研究成果は日本農芸化学会中四国支部第41回講演会にて一部報告済みである。
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今後の研究の推進方策 |
【胃粘膜傷害のエビアレルギー重篤化への影響の評価】26年度にストレス負荷法にて行った実験をアルコール投与法に変更し再検討を行う。
【胃粘膜傷害のエビアレルギー獲得への影響の評価】未感作マウス(BALB/c)にてアルコール性急性胃炎を誘導し,胃炎下でのエビアレルゲン経口摂取がアレルギー獲得に与える影響を調査する。未感作マウスにて胃炎を誘導した後にPen j 1を経口投与し,これを週ごとに2~3回繰返す。その後,皮下投与にて2㎍のPen j 1をAlumと共に負荷して1週間後に採血と血清分離を行う。この血清中の抗Pen j 1抗体レベルをPen j 1特異的ELISAにて測定し胃粘膜傷害の影響度を評価する。
【エビアレルゲン投与時の胃粘膜傷害マウスの胃壁組織の観察】胃粘膜の傷害によりバリアー機構が破綻し,アレルゲンタンパク質(Pen j 1およびOVAなど)の胃粘膜以下の組織への侵入が容易になるかについて調査する。複数のアレルゲンで実験を行い,侵入にタンパク質特異性があるか否かについても調査する。各投与15分および30分後に胃と十二指腸摘出し,固定,包埋,切片化した後にFITCラベルした各特異的抗体を用いて蛍光顕微鏡にて局在を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度中に動物実験の再試験を行う予定であったが,動物実験員会の承認手続き等で27年度に繰り越しとなった。これに伴って、動物購入費および飼育、評価実験にかかる経費が繰り越しとなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
胃粘膜傷害のエビアレルギー重篤化への影響の評価について,26年度にストレス負荷法にて行った実験をアルコール投与法に変更し再検討を行う。そのための動物購入費および飼育、評価実験にかかる経費として使用する。
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