大学等において研究推進の活性化・学際化、人材の流動化やキャンパスの国際化が進む中、環境安全の分野においても、広い視野を持ち、思考力・実践力を身につけた課題解決型人材の育成が期待されている。本研究は、実験研究、特に化学物質・高圧ガス・寒剤を取り扱う実験における危険要因の抽出をはかり、実験研究者がリスク管理を自発的に行うことが出来る教育手法の創成を目的とする。 実習コンテンツのひとつとして、実験研究者が危険性を知識としては誰でも知っている液体窒素を対象として、液体窒素を床に漏えいした場合に起きる危険性と適切な初対応を考えることができる教材を作製した。初年度に作製した透明PVC製のヒュームフードを設置するために構築した密封性かつ室外からの観察が両立できるガラス製フレームシステムを用いて、液体窒素漏えい実験を行い、実験者(人形)の体の各部位における温度および酸素濃度の影響を測定することを可能とした。 また、化学物質が各種物質に飛散した際の影響評価の一例として、現行では、長時間浸食後の目視による評価で行われているヒュームフードの壁面や実験作業台について、加速試験により定量的に評価する手法を検討した。前処理をした壁面・作業台材料板に、化学物質を滴下して、板材の水に対する濡れ性、表面の赤外吸収スペクトルの経時変化を測定することにより、評価が可能であることを見出した。 これらのことから、データに基づく教育教材は、座学で得た知識を、自分自身の問題として実践的な知識にすることに効果的であることを明らかにした。
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