研究課題/領域番号 |
26560085
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
林 誠司 名古屋大学, 環境学研究科, 講師 (40324397)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境教育 / 理科教育 / 種内の多様性 / 干潟 / アラムシロ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は研究費申請時のとおり,生物多様性教育において実践例が少ない「種内の多様性」に関する教育プログラムを構築するために,日本全国の干潟に生息する腐肉食性巻貝アラムシロの殻色多型に着目し,各地の集団のデータを集めるとともに,予察的な模擬授業の実践,学校向け殻色データベースの公開を行うことによって,本種の「種内の多様性」を認識・考察させる「環境・理科教育リソース」としての可能性を探ることにある. 当該年度は, 北海道函館市,青森県東津軽郡平内町・上北郡六ヶ所村,広島県廿日市市,熊本県上天草市・宇城市におけるアラムシロの集団を採集し(このうち,北海道・青森県においては標本を得ることができなかった),殻標本作成と整理,標本情報のエクセルへの入力を行った.現在はこれらの結果をもとにデーターベースソフト・ファイルメーカーproによるインターネット公開,模擬授業実践の準備をすすめている. 本年度は新たなアラムシロの殻色多型のデータ・標本を確保し,整理がすすんだ点において,有意義であった.特に広島県廿日市の集団は多様性が高く,全国で環境・理科教育を行う上での,基準となりうることが示唆された.現在10タイプの殻色型を設定しているが,新たに得られた既存のタイプに帰属させることが難しい個体の特徴も考慮した上で,児童・生徒向けにタイプ分けを簡素化することも検討している. また,付着物によって殻色が観察できない個体について扱いに苦慮していたが,この現象は還元環境下で促進されるようであり,これらの個体の出現頻度を環境指標として使用する方向性も見出すことができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究実績の概要」で述べたとおり,北海道・青森においては標本をうることができなかった(青森県では生息が確実視される新たな産地の情報を得ているが,再採集のためにフィールド調査を行う予算的,時間的余裕はなく,地元の研究者にサンプル送付を依頼する等の工夫を試みる). また,実習地の選定,相手校との調整など,模擬授業の準備の進行,ファイルメーカーproによるデータベースのデザインが遅れており,全体の達成度としてはやや遅れているといわざるを得ない.
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今後の研究の推進方策 |
「現在までの達成度」で述べたように,アウトリーチ関係の進行が遅れている.27年度に予定していたフィールド調査は,福岡県での調査をとりやめ,山口県,徳島県の2件のみとし,アウトリーチ分野により注力する.そのため,データ整理,データベース構築に携わる技術補佐員の雇用時間を増やし,代表者自身の実質的なエフォート率も予定より5%程度増加させる.また,本研究の一次的なまとめを,平成28年1月に開催される日本生物教育学会第100回全国大会にて発表することを予定している.
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次年度使用額が生じた理由 |
主に人件費の使用超過と,物品費とその他の費用が予定より少なく済んだことによる差額.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の「その他」の経費に算入する.
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