放射線教育の手段としてPADCプラスチック(ポリ・アリル・ジグリコール・カーボネート)を用いた可視化実験を提案し,その実践を試みてきたが,授業中に行うには未だ実験時間がかかるという欠点もある。この教育方法をより広く世間に普及させるためには,放射線の検出精度は劣ったとしても溶けやすいプラスチックが理想的であることがわかった。そこで本研究では,実験時間の短縮を目指したプラスチックを開発することを目的としている。 プラスチック材料としては,熱硬化性樹脂であるPADCを中心に検討を行った。PADC製造の基本的な行程は,溶液の混合,溶液の注型,溶液の熱硬化に分けられる。本研究では,主に混合材料の検討,注型するときの型材,熱硬化させる温度,時間,雰囲気を検討して溶けやすいプラスチックの開発を試みた。比較のために市販の放射線検出用PADCプラスチックと試作したプラスチックにAm241のα線を照射し,95 ℃の30 % KOH水溶液で化学エッチングを行い,エッチピット直径を測定した。光学顕微鏡で十分に観察可能な大きさである直径10 µmになるまでには市販品だと約35分,試作プラスチックだと約15分であり実験時間を57%短縮することができた。また,この教育方法をより広く世間に普及させるためにPADCプラスチックを用いた放射線可視化実験の指導書を作成した。
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