研究課題/領域番号 |
26560113
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
植阪 友理 東京大学, 教育学研究科(研究院), 助教 (60610219)
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研究分担者 |
市川 伸一 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70134335)
深谷 達史 群馬大学, 教育学研究科(研究院), 講師 (70724227)
後藤 郁子 お茶の水女子大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (60724482)
MANALO Emmanuel 京都大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (30580386)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 研修プログラム / 指導力向上 / 学習法指導 |
研究実績の概要 |
これまでの実践的研究から、子ども達には自立的に学習を進める「学ぶ力」が育成されていない実態が明らかにされている。また、学校現場でも、こうした力の育成は必ずしも十分に行われていない。一方、心理学では、個別的な面接を通じ児童生徒に適切な学習方略や学習観の習得を促す実践的研究活動として「認知カウンセリング」が行われてきた。認知カウンセリングを経験することで,教員が普段意識しない、児童生徒の学習方略、学習観のつまずきを指導する力が涵養されると考えられる。そこで、本研究は認知カウンセリングを活用し、教師の指導力を向上させる介入法および研修プログラムを開発することが最終目標である。 初年度の今年は、実践的研究を通じて、研修プログラムにするための基礎的な知見を集めた。例えば、文京区を中心に活動しているt-learningと連携し、教職を目指す学生に認知カウンセリングを実践させた。また、教職課程でこうしたプログラムを実践した場合にはどのような視点の変化が見られるのかを検討した。さらに、品川区の第二延山小学校と東京大学市川研究室が連携して協同研究を行った。具体的には、認知心理学を学ぶ大学院生が中心となって認知カウセリングを小学生に対して実施し、ケース検討会で学習者のつまずきを共有したり、授業改善の方向性をともに議論するなどの活動を行った。品川区の第二延山小学校ではその後、教員自身も認知カウセリングを実践している。これらの知見を生かしながら、効果的な研修プログラムの開発とその効果検証を行う。 また、今年度は認知カウンセリングを体験したことの効果を検証するのためのツールとして、指導力の一側面である教師の診断力を測定するテストを、他の科研とも連携しながら開発した。これらの知見については、既に英語論文にまとめており、投稿準備中である。実践を評価するための重要な道具となりうると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本プロジェクトは3年間の予定である。3年目の研修プログラムの開発に向け、実践の場を複数持ち、実際に教育現場で認知カウンセリングを教師や教職志望学生に行ってもらうことを行った。場面想定法を用いた効果検証の方法も開発しており、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の実践の結果、認知心理学的な視点を十分にもった大学関係者が行う場合には、学習観や学習方略といった視点からの指導に結びつきやすいことが示唆された。そこで、来年度は、この研究を更に進展させる。t-learningといった地域のリソースを活用して、教職を目指す学生を対象に心理学的背景を個別指導に生かす方法についての研修を実施する。その上で、品川区立第二延山小学校など学校現場において授業についていけなくなった学習者の支援に当たらせるというシステムを実現する。このシステムを通じて、教職を目指す学生は指導の主体者として学習者の自立に向けて向き合うこととなり、一斉指導における指導力向上にもつながると期待できる。さらに、学校現場では、学習法や学習観といった視点から診断を行った結果をケース検討会において共有することで、授業改善にもつながると期待できる。開発された効果検証の道具を用いて、こうした仕組みの効果についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた基礎研究の一部が実施できなかったことから、残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降に実施する予定である。
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