研究課題/領域番号 |
26560114
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
三宅 美博 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (20219752)
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研究分担者 |
山本 知仁 金沢工業大学, 工学部, 准教授 (60387347)
小川 健一朗 東京工業大学, 総合理工学研究科(研究院), 助教 (90612656)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教育工学 / ビッグデータ / 「場」 / 可視化 / 共創システム |
研究実績の概要 |
平成26年度は本研究計画の初年度として前者の目標に取り組んだ。具体的には、社会的コミュニ教育には機能的側面と「場」としての側面の二重性があり、前者の機能的側面は学習の効率化など、すでに教育工学で広く取り上げられてきた。しかし、その前提となる「場」のはたらき(雰囲気)は、学びへの意欲や主体性の向上、さらには創造性育成やコミュニケーション力の涵養など教育の「質」と深く関わる課題であるにも関わらず、工学的には全く手がつけられていなかった。「場」そのものは潜在的であり、集団の中に遍在化された状態であるため従来手法では客観的に評価することが難しかったからである。そこで本研究では、ヒューマンビッグデータに基づく「場」の可視化技術の確立、および、それに基づく大学教育を舞台とした場づくりと共創的教育イノベーションの実現をめざしている。 ケーション行動に関するビッグデータ計測システムを教育現場に適用し、「場」を可視化する方法の開発に取り組んだ。特に、研究代表者がこれまでに確立した「場」の評価手法を大規模集団に拡張し、その上で一人ひとりの学習行動に注目して、身体運動(身振りや頷き)のインターパーソナルな同調や空間的な近接関係から「場」を抽出することに成功した。 研究成果としては、1)ヒューマンビッグデータに基づく「場」の可視化システムの開発に成功したことが最も重要である。ただし、この計測システムを2)教育サービスの現場におけるヒューマンビッグデータ計測に適用する段階は現状でまだ準備中である。さらに、その結果に基づく3)教育サービスにおける「場」のモデル化と設計論の確立についても若干遅れている。平成27年度において、これらの残された課題への取り組みを加速し、研究計画の当初の目的を実現する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26 年度は3つの研究項目を達成する予定であった。1)ヒューマンビッグデータに基づく「場」の可視化、2)教育サービスにおけるヒューマンビッグデータ計測、3)教育サービスにおける「場」のモデル化と設計である。 このうち第1の項目である、ヒューマンビッグデータに基づく「場」の可視化については、研究代表者が「場」と深く関わる身体運動のインターパーソナルな同調および空間的な近接性に基づいて「場」を評価する方法を確立しているが、それを教育現場における集団的コミュニケーション行動に適用し、ヒューマンビッグデータに基づく「場」の可視化技術として確立することに成功した。 しかし、第2の項目である、教育サービスにおけるヒューマンビッグデータ計測については、上記の第1項目の可視化システムの完成が平成26年度末になったため、現状では準備段階にとどまっている。また、第3の項目である教育サービスにおける「場」のモデル化と設計については、集団的コミュニケーション行動を数理的にモデル化しシミュレーションすることに成功しているものの、上記の第2項目のデータ取得が遅れており、教育サービスにおける場づくりの設計論を検討するには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度計画において残されている第2項目と第3項目を完成することとともに、本来の27年度の研究計画を遂行する。具体的には、教育現場への実装を目的として1)教育現場における場づくりと共創的イノベーション、2)東京工業大学における教育の場づくりの実践、3)金沢工業大学における教育の場づくりの実践が予定されている。 第1項目では、研究代表者が所属する理工系の大学教育を取り上げ、教育現場における場づくりへの取り組み(アクティブラーニング等)とそれに対する「場」の可視化技術の導入によって、それらの取り組みの効果を分析し、効果的な学びの場づくりに向けた場のデザインの方法を確立する。さらに、このような場づくりを教育イノベーションのPDCA サイクルの中で実践し、教育効果との相関を分析し、場づくりの方法論として確立する予定である。 第2項目では、東工大教育推進室と協力し、東工大が進める創造性教育の現場等において「場」の評価と教育効果の関係を調査し、多様な教育現場における場づくりの事例を収集しデータベース化する。第3項目では、研究分担者の所属する金沢工大で導入されているアクティブラーニングの効果を「場」の可視化を介して客観的に評価し、データベース化を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度で残されていた研究項目2は教育サービスにおけるヒューマンビッグデータ計測であり、この項目は教育現場で大規模に遂行されることになる。そのため多くの被験者と多数の計測装置を必要とする。この被験者謝金と物品費を26年度中に使用できなかったため次年度に予算を繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度には上記の研究項目2の計測を実施することになるため、26年度から繰り越した予算は予定通り使用される。
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