研究課題/領域番号 |
26560118
|
研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
松田 憲幸 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (40294128)
|
研究分担者 |
瀧 寛和 和歌山大学, 学内共同利用施設等, 学長 (10304180) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 教育工学 / 経験学習 / メタ認知 / 看護教育 |
研究実績の概要 |
実体験において何が重要で,なぜ重要なのかを見極め,ものごとの考え方を学ぶ研修について,連携する病院組織において参加を呼びかけた.自らの意志で参加した看護師は延べ12名であった.研修を通して,指導者が言い当てた講評語いを体系化し,講評結果を指導リポジトリへ蓄積した.2010年以降,研修に参加してきた看護師により執筆された事例(ケース)を約100件に対する指導リポジトリを通して,4段階の思考スキル(ア)悩みを整理して言葉に言い当てられない,(イ)言い当てた文章の間の論理性を整理できていない,(ウ)言い当てた対立の分析に失敗している,(エ)思考が無自覚に囚われている,を見いだした.研修に初めて参加した時に作成された76ケースについて,アが20ケース(26%), イが24件(32%),ウが18件(24%), エが14件(18%)の分布であった.また,ケースにとりあげられたトピックを分類した結果,終末期患者を扱う看護が32%,意思決定困難な患者の看護が28%,後輩の指導・教育が28%を占めた. 一方,研修を修了したリーダー看護師は,研修に参加した看護師が記述したケースに対して考え方の問題点を指導する.この教授活動を通して思考法をさらに深く学ぶ.リーダー看護師は,自らの体験を言葉に言い当てる経験はあるが,他者の思考の問題点や原因,改善策や効果を,いざ,言葉に表そうとして失敗している.これは他者に分かりやすく伝えるために必要な,思考を表す言葉を持たないことに起因すると考えられる. なお,実施した研修は,2日間で構成し,第1回目を7月24日と9月10日に,第2回目を9月25日と10月22日に,第3回目を11月12日と12月17日に開催した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実証を通して,リーダー看護師の学びについて,研修指導者や他のリーダー看護師,学習者との間で,思考を説明することが難しい課題が浮かび上がった.特に指導者など他者が言い表す思考の問題点を表す語いを理解できない点が顕在化した.思考を表す言葉を持てていないリーダー看護師が,研修で他の指導者やリーダー看護師と思考の問題点の共通認識を醸成するための仕組みが新たに必要となった.
|
今後の研究の推進方策 |
浮上した課題に対応するため,次の二つを計画する.一つは,研修を経験した看護師や,リーダー看護師が研修の後にどのような学習,思考を辿っているかの追跡調査である.二つは,指導者の思考を表す語いを整理・体系化するツールの構築である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研修で実体験を言い当てて思考を整頓する訓練を修了した「リーダー看護師」が,指導者や他のリーダー看護師,学習者との間で,思考を言い当てることが難しい課題が新たに浮上した.この原因を克服する必要が生じたため.
|
次年度使用額の使用計画 |
研修を経験した看護師やリーダー看護師が,その後の学びや思考にどのような効果・影響があったかを追跡調査し,また,リーダー看護師による指導者の思考を表す語いの理解を促すため,語いの体系を整理するためのツールの構築を計画している.
|