同じ問題が二度起きない現場で,サービス組織がチームの連携を目指すとき,その実現はたやすくない.日々,直面する問題について,同僚との間で「何が重要で,なぜ重要なのか」共通の認識をもつことが難しいためである.これを解決するための一つの策は,日々の経験における自らの”考え方”の合理性を同僚に語って聞かせることである.部署の構成員の間に問題に対する”考え方”を言い表すための”語彙”が徐々に共有され,日々起きる予測のできない問題のための共通の”ものの考え方”が育まれて,チームによる連携を生み出すことができる.本研究は,実際の看護組織と連携し,自らの経験の考え方を語ることによるリーダ育成法を実証的に確立する. 実際の看護組織と連携して,自らの経験から知識を創造する過程を言葉に表す「リーダ看護師」のための育成法を看護の現場の意見を取り入れながら実証的に確立して,リーダグループを形成する.まず1年目に,熟練看護師による自らの知識創造に関する”語り”を収集して,思考を表す”語彙”を体系化する.2年目は,引き続き体系化の作業と並行して,リーダ看護師育成法を設計し,その教材教具を開発する.最後に,実際の研修へ導入し,実証を通して,設計を見直す. 連携する大学病院にて,年3回の研修を開催し,延べ約100名以上の看護師の参加を得ることができた.これら100ケース以上の看護の思考の指導を通して,育成法を,随時,見直しを図り,開発した.また,指導者と学習者から収集した事例(ケース),誤りの指摘と修正の添削,指導者による思考の講評文書を分析し,思考の誤り,原因,助言,効果を表す語彙を体系化した.さらに,将来の研修で活用できるよう,学習コンテンツを制作し,それらを語彙体系の上で整理した.
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