研究課題/領域番号 |
26560120
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
安武 公一 広島大学, 社会(科)学研究科, 講師 (80263664)
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研究分担者 |
多川 孝央 九州大学, 情報基盤研究開発センター, 助教 (70304764)
山川 修 福井県立大学, 学術教養センター, 教授 (90230325)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / 学習科学 / ビッグデータ / Learning Analytics / 社会物理学 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は膨大で多様な学習履歴データの解析と理論化に対して,社会物理学(Sociophysics) 的アプローチを採用することによりビッグ・データ時代の学習科学・教育工学研究手法として注 目されている Learning Analytics のための方法論的基盤を構築することである.そのために当初の研究計画では研究初年度(平成26年度)に「大規模データの解析と一般法則の発見」に目標を置いていた.特に「一般法則の発見」については学習環境におけるMultiplex Network構造の解明に焦点を当てていた.
データ解析の面についてはわれわれだけの研究だけで行なおうとしていた従来の目標から若干プランを変更し,平成26年9月和歌山大学で開催されたJSiSE(教育システム情報学会)全国大会の企画セッションにおいて,コーディネータとして「Learning Analytics ver.2 を目指す先端的学習支援技術と学習分析」を担当した.この企画セッションは,従来の分析手法を縛られない,データ・サイエンスを志向した新しいアプローチを広く問うものであった.われわれが企画したセッションは広く関心を呼び,平成27年度のJSiSE全国大会でも同様の企画セッションを担当することとなった.
理論面においては現在Multiplex Network上における「協調的行動」の研究に着手している.現段階では十分に解析的な結論は得られていないが,Single Network上では見られなかった協調的行動のダイナミクス現象が発生することをわれわれはすでに確認している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定よりも研究が遅れている理由は次の通りである.(1) Multiplex Networksに関する研究はComplex Network Scienceの領域でも始められたばかりであり,さまざまな試みが行なわれている段階であること.(2) 学習環境を記述する空間をどのようにとらえるか,その数学的な基盤に関する基礎研究は学習科学/教育工学の分野ではほとんど行なわれてこなかったこと.(3) 集計的な人間社会の行動を普遍的に記述する(とされる)方程式が発表され,この理論とわれわれの研究との整合性,相違点をチェックする必要が出てきたこと.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では研究最終年度に当たる今年度には次の2つの目標を置いていた.(1) 社会物理学モデルにより理論分析 (2) 「場」の相互作用を記述する社会物理学モデルによる「社会に埋め込まれた学習」の理論化.
上で述べた研究の進捗状況とこれらの目標を考慮し,われわれは今年度の研究を次のようにプランニングしている.(1) クルト・レヴィンによって提唱され(その後ほとんど忘れられたままになっている)「場の理論」を参考にしつつ,学習空間という「場」における力学系を記述する理論的基盤を整備する.おそらくこの研究では学習空間に何らかの「位相」を導入するアイデアが必要となる.(2) 「場」の力学系とMultiplex Network上のモデルを合わせることにより,本研究の最終目標である「社会物理学的アプローチによる学習科学の理論的基礎」への突破口を見出す.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初研究初年度に購入を予定していたデータ解析とシミュレーション用のコンピュータの購入を次年度にまわした.および,初年度3月に2つの国際会議への参加を予定していたが公務のため出席できなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度にあたる今年度は予定していたよりも多くの国際会議において成果の発表を行なう.
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